先日の食事会のときにパティシエのユリさんがピクニックに誘ってくださいました。
「今度料理人やパティシエの人たちが集まってピクニックする予定なんですけど、よかったら来ませんか?」
『え? いやお誘いいただけるのは嬉しいですが、部外者なのにいいんですか?』
「全然! 奥さんがピアニストやってる人がいて、夫婦で来るのでもしかしたら話が合うかなーと思って」
『それでしたら是非よろこんで』
ということで1日の午後にピクニックに行ってきました。場所はパリ南西部にあるアンドレ・シトロエン公園です。以前リーム祭りのときに紹介したラジオフランスの近くなんですが、あそこに行く目的以外で南西部に行ったことがないので、メトロを降りてからの風景が新鮮でした。
パリは小さい街ながら場所によって随分個性が違います。とてものどかな感じでこういうエリアに住むのも悪くなさそうですね。メトロから5分ほど歩くと公園が見えてきました。かなり大きいです。
現代的なデザインの洒落た公園ですね。待ち合わせ場所が「気球が飛んでるあたり」って書いてあるのですが、そんな気球なんてどこに…
木の後ろに何か見えますね。オブジェか何かかと思ってたらほんとに気球が飛んでるとは。
建物に気球が反射してる面白い一枚が撮れました。今年はたまたま5月1日が日本にとって特別な日でしたが、普通はいわゆるメーデーというやつで、フランスも祝日になっています。なのでピクニックしている人たちも結構たくさんいました。どれかなーと探していると日本人っぽい集団を発見。このときは7人でした。
初めましての人たちの中に前回も登場したモデルのケンもいました。さすが料理人の集まりだけあってどれも美味しそうですねー。お腹が空いていたので早速あれこれ頂いてしまいました。
僕の隣に座っていた恰幅の良い男性と最初ずっと話していたのですが、すごく気さくな方で大いに盛り上がりました。お名前はダイキさん、ホテルの料理人をしている方なのですが、話を聞くと料理の修行でこちらに来たわけじゃないんですね。彼は2004年からずっとパリにいて、最初は画家になろうと思っていたそうです。アルバイトとしてこちらで初めて料理の勉強をして、現在はもう立派に仕事として生計を立てつつも、同時に画業も行なっているそうです。かっこいいですねえ。最も理想的な生き方の一つと言えるでしょうね。
ダイキ「普段はどんなもの食べてるの?」
僕『そうそう、僕もそれを相談しようと思ったんです』
「うーん、冷凍ハンバーグはまあ悪くないと思うけど、ナックのソーセージはやめたほうがいいね。保存料とか結構入ってるし、健康には決して良くないよ」
『ガーン。いやでも、肉類がほんとに高いじゃないですか。だから困ってて』
「まあ確かに日本に比べると高いね。だから鶏肉とかだと一羽丸ごと買うのがいいよ。捌くのは意外に簡単だから。今ならYoutubeで解説動画もたくさんあるし。それで保存しておけば安く済むよ。あとパック野菜は一見健康的に見えるんだけど、実際のところあまり食べる意味はないね。ちゃんと質量のある野菜を買って食べたほうがいいよ。今ならブロッコリーとかインゲンとかが安いから」
『うう… 食生活完全に見直さなきゃいけないですね… でも野菜を丸ごと買っても、一人だと使い切る前に悪くならないか心配で』
「一度全部を軽く茹でて、その状態で保存しておけば数日は問題ないよ。そうしておけばパスタとかと一緒にフライパンで炒めてもすぐに火が通るし楽だよ。あとはラタトゥイユとか作ればずっと保つし、夏場だったら冷えたまま食べてもいいしね」
いやー大変反省を促されるお話を聞かせて頂きました。まあこのままでいいとは思ってなかったですが、なるべく早くちゃんとした食生活サイクルを築かないといけませんね。
「あとこれは世の女性全員に言いたいことだけど、たんぱく質を摂らないのは絶対やめたほうがいい。ダイエットとかで肉類をやめてたんぱく質不足になってる人がたくさんいるけど、そうすると肩とか腰回りが貧相になって見た目にも健康的にも良いことは何一つないよ」
『いや、日本だと大豆で摂取できるじゃないですか。味噌とか納豆とか』
「もちろん植物性たんぱくも重要なんだけど、動物性たんぱくに完全に代替できるものではないから、それは別にしたほうがいい。だから鶏肉とか豚肉とか、もちろん魚でもいいけど。それはちゃんと食べたほうが健康的な身体が作れるよ」
ですってよ。まああくまで一個人の意見ですが。
それで例のピアニストの奥様ですが、彼女は日本の大学院を出た後でこちらに来て、今は学校に通いつつも郊外の方で指導も行なっているそうです。こちらでピアノの職を得てるなんて立派なものですね。彼女とは別に難しい話はしていないんですが、一般には聞き慣れない単語が出てきて他の人たちがポカーンとしていました。まあそんなものですよね。
「楽譜で書くときはどんな曲作るんですか?」
『僕はなるべく特殊奏法を使わない曲を書くタイプですね。なんでかと言ったら、あなたみたいな、古典に馴染んでいる人に弾いてほしいからなんですよ。やっぱり新作の楽譜見たら珍妙な指示ばっかりで「うっ」ってなること多いでしょう? それで結局その専門家しか弾かないというのは面白くないですからね』
「素晴らしい! いやー了三さんみたいな作曲家がいてあたしゃ嬉しいよ!」
『いや、問題はそこじゃなくて、それで結局「ちゃんと良い曲が作れるのかどうか」ですから』
ユリさんは「なんだかよくわからないけど、話が合ってるみたいでよかった」なんて言ってましたが、これは表面上に留まってるからそう見えるだけ、という可能性の方が高いのです。実際に彼女が僕の曲を聴いたり、僕が彼女の演奏を聴いたりしたらヴォエってなる可能性は十分にあるわけで。まあ何事もそうですよね。奥深いところでのすれ違いの方がわずかな差異であっても溝が深いというのはよくあることです。宗教内対立のように。
その後は僕とダイキさんで「いやーモデルに生まれる人生なんて歩んでみたいもんだねー」なんてケンをからかいつつ、楽しく過ごしました。最終的に9人集まって、せっかくだから気球に乗ろうかなんて話になったんですが、順番待ちの行列が一向に短くならなくて、結局諦めました。ここは凱旋門もエッフェル塔も近い場所なので、高いところからの景色は良さそうな感じですけどね。まあまたの機会にしておきましょう。
公園は本当に広くて全然見て回ることはできませんでした。以前に紹介したラ・ヴィレット公園も広くて良い場所ですが、あちらは子供向けの遊具がたくさんあって賑やかなので、こちらの方が落ち着いた雰囲気はありますね。
いやーしかしダイキさんとは初対面とは思えないぐらい盛り上がって話してしまいました。是非またお話ししたいものです。誘っていただいたユリさんには丁重に感謝のメッセージを送っておきました。また何かの集まりに呼んでもらえると嬉しいですね。試験前だろうとホイホイ行きます。