僕が好きなアニメOP・ED集 その3

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第1回の記事から既に1年が経過していて驚愕したこのコーナー、アニメオープニング・エンディング特集第3弾です。前回はこちら。

僕が好きなアニメOP・ED集 その2
やってまいりましたこのコーナー、もっぱら自分のためのアニメオープニング・エンディング特集第2弾です。前回はこちら。前回は3人のアニメーターを特集して主に映像を楽しもうという趣旨でしたが、今回は音楽の方に注目してみましょう。ずばり、MONAC...

 

前回の宣言通り、今回も引き続きMONACA特集、というより田中秀和特集です。

田中秀和は2010年からMONACAに入社、同年に放映された『WORKING!!』から早速キャラソンを担当しデビュー。前回紹介した神前暁があまり奇を衒わずにキャッチーな作曲をするのに対し、彼はかなり奇を衒う、一般には珍しいハーモニーや音色を多用することで知られています。

とりわけ有名なのが彼の代名詞とも言える、俗に「ブラックアダーコード」や「イキスギコード」と呼ばれる特殊なハーモニーです。これについては解説サイトや動画が山ほどあるので、興味のある方は探してみてください。以下この記事では「例のコード」という表記にします。

一応サウンドハウスの2019年の記事を紹介しておきます。

最近アニメソング界隈で話題の分数aug

 

では本題のOPEDに参りましょう。今回は8作品紹介します。

 

まず最初は2014年の『ハナヤマタ』OP、「花ハ踊レヤいろはにほ」です。

 

 

知っている人からすれば「いきなりこれかよ」と言いたくなると思いますが、やはりこの曲が一番田中秀和の魅力が詰まっているなとつくづく思うので、最初に紹介しました。まあこれはとんでもない名曲ですね。90秒でまとめるアニメ主題歌としてこれ以上ないほどの完成度です。「ぱーっとぱーっと晴れやかに」というフレーズが冒頭とサビと合計3回出てきますが、3回とも違うコードに同じメロディーを乗せているのがテクニカルですね。例のコードは0:35あたり、Cメロへの繋ぎでわずかに使われています。

映像もまた素晴らしいです。演出は監督であるいしづかあつこ自身が担当していますが、冒頭の江ノ電から「光の撮影処理」にこだわっているのがよくわかります。新海誠の得意なアレですね。音楽との取り合わせかたも実に見事で、アニメOPとして大変完成度の高い傑作です。

 

 

では続いて、2013年の『這いよれ! ニャル子さんW』OP、「恋は渾沌の隷也(こいはカオスのしもべなり)」です。

 

 

2012年に第1期が放映された『這いよれ! ニャル子さん』の、これは第2期OPですが、第1期OP「太陽曰く燃えよカオス」が当時かなり話題になっていて、ニコニコ動画では特に熱狂的なブームになっていました。それだけ人気があった主題歌なので、続編のOPに対する期待に応えるのは難しいのではと思われた中でこの曲を仕上げてきたわけですから、いやはや大したものです。音楽の構成的に第1期OPと対称を作りながらもまったく新しい楽曲に仕上げている点も素晴らしい。知らない方は是非そちらとも聴き比べてみてください。

 

 

続いて、2016年の『あんハピ♪』OP、「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」です。

 

冒頭からいきなり怪しげな感じ、これも田中秀和お得意のaug(増三和音)コードですね。他の楽曲でも使っていますが、この曲では特に多用しています。そのコンセプトはよくわかりますが、それにしても0:35のところは実に怪しげです。ここ思いっきりベースラインとメロディーラインがぶつかってますからね。これをアリと捉えるかナシと捉えるかは意見が分かれるところでしょう。いくら奇を衒う田中秀和の作風でもここの部分ほど冒険的なことをしている楽曲は他に知らないので、個性というよりは例外的な処理という感じです。気が向いたら詳しく分析してみましょう。

 

 

続いて2012年『アイカツ!』の第1期ED、「カレンダーガール」です。

 

これも実に名曲です。出だしの数秒で一気に引き込まれてしまいますよね。やはりこのスラップ奏法のベースが魅力的で、この曲名で検索すると「ベース弾いてみた」動画が大量に出てきます。確かに弾いてみたくなる気持ちはよくわかります。

また田中秀和にしては珍しく(少なくとも自分は他に知らない)ボーカル加工をふんだんに使用していますが、それが大変効果的にサビとの対比をなしていて、これもまた90秒の完成度が極めて高いなとつくづく感心します。やはりというか音楽業界でも評判が高く、2019年発表の平成アニソン大賞で特別賞に選ばれました。

 

 

続いて2013年の『サーバント×サービス』OP、「めいあいへるぷゆー?」です。

 

これは個人的にかなり気に入っている曲です。とにかく編曲が素晴らしいですね。Aメロのメロディーと同じリズムで動いている高音域のピコピコ音やわざとローファイ加工しているピアノやサビの鐘の音など、楽曲を豊かにしている遊び心が満載で聞き飽きない仕上がりになっています。こういうところも田中秀和の大きな魅力ですねえ。

この映像の感じ、ひょっとしたら石浜真史の仕事ではないかと思った人もいるかもしれませんが、OP演出は監督と同じ山本靖貴です。まあ影響を受けてるのは間違いないでしょうけれど。楽曲の楽しさを表現している良いOPだと思います。

 

 

続いて2017年の『恋愛暴君』OP、「恋?で愛?で暴君です!

 

これもあんハピ同様の怪しげな始まりで、いかにも田中秀和らしい感じ。そしてこのイントロからは想像のつかないようなサビへ持っていくのもまた田中秀和の得意技です。サビ自体も王道的かと思いきやサビの4小節目(パンチラのところ)で一工夫入れたりして油断なりません。構成面でも、Bメロのフレーズをサビ前に持ってきたりラストに持ってきたりして凝っていますね。派手な曲ではありませんが聴けば聴くほど出来の良さに驚かされます。

 

 

続いて2017年の『アニメガタリズ』ED、「グッドラック ライラック」です。

 

 

これはいわゆる例のコードがふんだんに使われている曲です。イントロからAメロに行く直前やサビ前などがわかりやすいでしょう。これまで紹介してきた楽曲でもそうですが、やはり合いの手の入れ方が抜群にうまいですよね。前半部のかわいらしいのだけでなく、サビでの掛け合いもとても見事です。こういう部分の手際も含めて、田中秀和の楽曲はアニソンやアイドルソングのような「複数人の女の子が歌う、歌唱力に頼らない楽曲」の一つの到達点のような気がします。ライブで歌うには難しすぎるというのを逆手に取ったという点も含めて。

 

 

では最後です。お待たせしました。もちろん締めはこの曲、2016年の『灼熱の卓球娘』OP、「灼熱スイッチ」です。Youtubeにも映像はありますが、妙なイコライザーというかコンプレッサーみたいなのがかかっていて音が歪んでいるのでVimeoの映像をおすすめします。

 

 

おそらくこの曲こそが田中秀和の名前を最も世に知らしめたものでしょう。実際僕もこのときに初めてその名前を認知しました。初めて聴いたときは本当に度肝を抜かれました。ニコニコ大百科のこの楽曲の記事を少し引用しましょう。

 

表題曲の最大の特徴は曲調の振り幅の大きさであり、Aメロ/Bメロではコミカルで楽しげな曲調だが、サビで一気に楽器陣が暴れだし灼熱な曲調となる。作曲者である田中秀和氏は、アニメの監督を務めた入江泰浩氏から「(アニメの内容に合わせて)萌えとスポ根の二面性を強調してほしい」とのディレクションを受けたとインタビューで語っており、その「二面性」がAメロ/Bメロとサビの曲調として表現されている。
更に、表題曲とカップリング曲共にピンポン球の打球音がリズム楽器として使用されており、このことからもアニメの内容を強く意識した作品であることが伺える。

 

まさしくここに書かれている通りの二面性を追求した曲で、こういう面白さこそがアニソンならではの魅力だと僕は思います。先述した合いの手についても、前半部ではそれを細かく入れている一方で、サビ以降は一切入れていないあたりもこのコンセプトに沿っています。そしてなんと言ってもサビの冒頭。ここで例のコードが使われているわけですが、初めて聴いたときは本当に衝撃的でした。「ええ!?」とギョっとすると共に、「でもこの響き以外他に考えられない」という、まさに囲碁で神の一手を見せつけられたような感覚です。

で、『灼熱の卓球娘』はOPのサビ前にそのエピソードのハイライトを少しだけ挿入するという、いわゆるレイズナー方式を採用している話数がいくつかあるのですが、その初登場である第3話バージョンのOPも是非ともご覧頂きたいです。

 

 

これ本当いいですよね。このセリフの抜き出し方もいいし、先述したようにサビ冒頭の衝撃もあってこの方式が抜群に機能しているので、これを採用した監督は素晴らしい判断をしたなと思います。

 

そしてまたこの曲はフルバージョンも実に良いんです。特に2番の後でインストが入ってもう一度サビに入るところでギターソロをバックにサビを歌う箇所がとても良い。これも是非聴いてもらいたいですね。ニコニコにこのフルバージョンとED曲、カップリング曲がセットになっている動画があるので、こっそり見てみてください。

 

 

以上、田中秀和楽曲のアニメOPED紹介でした。

今回紹介した曲はどれも名曲なのですが、やはり「花ハ踊レヤいろはにほ」と「灼熱スイッチ」はアニソン史に残るレベルの名曲だと僕は思っています。アニメ以外でも田中秀和の楽曲はたくさんあって非常に興味深いものもあるのですが、今回はあくまでアニメOPED紹介なので、興味ある方はいろいろ探してみてください。