2019年春アニメ 総評

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2019年4月〜6月期のアニメシリーズの、最終的な総評と感想を述べていきます。

第1話時点での評価はこちら、途中経過はこちら、また評価基準についてはこちらをご覧ください
MALはMyAnimeListの現時点のスコアと投票人数です。

 

以下、感想は完全にネタバレになるので、まず作品ごとの評価だけ紹介します。A評価以上のものは一度視聴してみるのを強く勧めますので、是非ご覧になってみてください。

今期最終評価はこちらです。

 

S

進撃の巨人 Season3

A

さらざんまい

B

鬼滅の刃(未完)
フルーツバスケット 1st season(未完)

C

どろろ
キャロル&チューズデイ(未完)
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(未完)

D

Fairy gone フェアリーゴーン(未完)

 

こうして見ると次クールに続くものばっかりですね……さて、評価の上なら『進撃の巨人 Season3』が今期最優秀作品なんですが、これは長く続いているシリーズものであり、今期もさらにその分割の後編であるということ、なにより作品そのものが規格外なのでシーズンごとの総評で語るべきものではないと判断しました。

 

したがって、2019年春期ヒゲメガネボウズ賞は、

さらざんまい

です。

 

では各作品の詳細な感想を述べていきます。ネタバレ注意。

 

 

 

S 進撃の巨人 Season3 (MAL: 9.18/130k)

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僕はまずアニメから見始めて、そのアニメ化されたところまで原作を読む、というやり方で追っています。なのでSeason3の部分はまだ原作を読んでいませんし、もちろんその後の展開もまだ何も知りません。

ちょっと例外的な作品なので評価なしでもよかったのですが、評価をつけるとしたらS以外はあり得ないでしょう。原作・アニメの圧倒的なクオリティの高さだけでなく、作品そのものの重要度が他とは比べようもありません。今この時期に何のアニメを見るべきかと訊かれたらまずこの作品を勧めます。来年秋のラストシーズンを迎える前に、まだまだ十分見返す時間があります。まだアニメ版を見たことがない人はレンタルでも配信でも、とにかく見てください。この先を読まずに、本当に

 

さて、今期の10話の中でのクライマックスは、なんといっても第6話「白夜」でしょう。OPなし、Aパート最後だけ薄く音楽をつけてますが、それ以外は終盤まで劇伴を一切使わない回でした。前期の総評で、『どろろ』の音楽を使わない方針について触れていますが、サボって音楽をつけない選択と演出の計算の上で音楽をつけない選択の違いが、ここによく現れています。

第6話は脚本も演出も声も凄まじく、それだけで他に何も要らないくらい充実した内容になっています。ここに音楽を足すことも出来るでしょうけれど、音楽をつけないという選択に勝るような音楽とその使い方を発見するのはほぼ不可能に近いくらい難しいと思われます。

Aパート終盤はリヴァイが最初の決断をする場面で大きな転換点となるので、エレン・ミカサとの緊張感を生むためにも音楽を薄くつけるのは効果的。しかしBパートからはまた音楽なしでドラマが進行。その後フロックがミカサに対し壁の向こう側で起きた惨状を語るシーン、音楽をつけるとしたらここだけでしょうね。ただ、その後ハンジがミカサを取り押さえるところでうまく音楽を終わらせるか表情を転換させるかしないといけないし、そのやり方が露骨だとドラマを壊しかねません。それならば一切何もない方がよほど効果的です。

そしてなにより、最後のリヴァイがエルヴィンを回想しながらその決断を覆す瞬間、我慢してきた音楽をここでようやくぶつけるという演出は実に見事です。そこからアルミンの復活につながる流れも完璧。ああ、このエピソードを見るためにここまで見てきて良かったと、心からそう思いましたね。

 

 

 

 

それにしても今期は第1話から全て、まったく中だるみするエピソードもなく、凄まじい完成度のシーズンでした。こうやって時々、敵味方問わず戦術を図示する場面がありますが、重要ではあるが言葉の上だけでは想像するのが難しい箇所を視聴者のストレスなく通過し、映像としての見せ場や人物の感情の動きの方へフォーカスさせる気遣い、これはとても素晴らしいです。絶妙にかわいらしいイラストがまた良い。こういうのこそフェアリーゴーンが見習って欲しかったんですよ。

そして音楽。澤野弘之は今や最も有名な劇伴作曲家の一人となりましたが、『進撃』は特に、彼以外の可能性を考えられないくらい素晴らしい仕事です。音楽の使い方と合わせて、いつかちゃんと分析してみたいですね。

 

2020年秋のラストシーズンを迎えるまでは絶対に死ねませんね。必見です。ちなみにMALスコアはこれまでの総合ではなく今期の10エピソードだけのスコアなんですが、9.18ってとんでもない数字ですね。まあでもこれだけ評価が高いのも十分頷けます。

 

 

A さらざんまい (MAL: 7.75/16k)

(企画:S、脚本、コンテ、音楽、作画:A

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——戦乱の最中、絶望に飲み込まれそうになった私は、自らの尻子玉を二つに割ったのですケロ。
——自己犠牲なんてダセぇ真似すんな、バカヤロー!
——この世界は今、再び試されようとしています。つながっているのか、つながっていないのか。

 

今期の大賞作。一言で言うなら「よくもまあこんなものを作ってくれたものだ」という感じ。

考察の類はブログやツイッターに溢れているのでここでは何も語りません。ただ、僕にとってのこの作品の感動は、『シン・ゴジラ』に対する感動とよく似ています。いずれも、世界戦略を無視して「今の日本」というものに強くフォーカスしているからです。

芥川の河童と、「三昧」を中心に据えた仏教的なテーマ、東京大空襲で死体によって埋めつくされた隅田川という舞台などは、海外のアニメファンにはほぼ理解不可能でしょう。これはシンゴジラで描かれる日本の政治家・官僚の姿や自衛隊の限界(と可能性)、アメリカや隣国とのパワーバランスに振り回される姿が海外のファンに理解し難いのと似ています。

そしてシンゴジラは、ゴジラの恐ろしさとかっこよさの両面を最新の撮影技術で「現代らしく」味付けしたのに対し、さらざんまいではBL要素とミュージカルを前面に出すことで「現代らしく」味付けしているわけです。そしていずれも、今生きている日本人に対する強烈な、しかし希望を感じさせるメッセージを打ち出しています。

 

先日紹介したジャパンエキスポ然り、現在は世界の市場をにらんだアニメの企画がとても重要視される時代です。それは確かに大事、本当に大事なことです。しかし薄ら寒いポリコレを纏った企画とは真逆に、現代の日本人に思いっきり狙いを定めて直球を投げるような企画を実現させてくれることに、僕は心から嬉しく思います。

 

途中経過で書いた通り前半はちょっとダルいなと思う部分もありましたが、後半特に最終2話は一気にクライマックスを駆け抜けた感じでとても良かったですね。レオ役に宮野真守を起用した伏線を回収するかのように歌わせるあたり、笑ってしまうような見事さです。第10話の彼の演技は実に素晴らしくて、その実力を存分に味わうことができます。ただ顔がうるさいだけの声優じゃないんですよ。

音楽は終始素晴らしかったですが、最終話は特に良かったですね。「これが最後のさらざんまいですケロ!」からの3人合唱、その後まさかのカワウソの黒田崇矢も入ってきて、暗闇で自然にカワウソイヤァへ繋げてからクライマックスを迎える、最高のシークエンスでした。これこそ上映会で大歓声を上げるところですよ。

 

EDで悠の服役を描くのもとても良かったし、最後をちゃんと河童姿で締めるのも良いです。「あったかもしれない未来」が描かれることで十分ハッピーエンドなので、僕はこの終わり方で十分満足しています。

 

面白い、良い作品でした。これを機にイクニ作品を改めて見直そうと思います。

 

 

B 鬼滅の刃 (MAL: 8.49/60k)

(作画、美術:A

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14話まで。

「思ってた以上に小さくまとまってしまったな」というのが正直な感想です。炭治郎が日輪刀を得てからの展開は「バトルものとしての軌道に乗った」という感じですが、その軌道に乗って以降があまり面白くないというか、この調子がずっと続いていくんだろうなという印象を受けてあまり興味が惹かれなくなります。

ギャグ描写については、これはアニメ演出の問題も大きいかもしれません。ギャグそのものは雰囲気を和らげる作用程度のもので、言ってしまえばさほど凝ってもなく面白くもないにも関わらず、炭治郎にしても善逸にしても表現やボイスディレクションが過剰でくどいので、僕にとっては冷める要素でしかなかったです。もっとサラリサラリと通り過ぎるように挟むならいいんですけどね。

そしてダルいコンテが結構目立っていました。第13話は全体ダレ気味でしたが、特に終盤の露骨な引き伸ばしみたいなのは一気に見る気が失せるので、こういうので印象を悪くしているのが僕にとっては大きいです。

 

炭治郎というキャラクターについては、「新しい時代の少年漫画的主人公」という感じがしますね。生真面目天然、家族思い、敵(鬼)にも心を寄せる優しさなど、今の若い世代の子達に愛されるようなキャラクター作りに成功していると思います。その優しさの根底が揺らぐような、優しさと甘さが紙一重になって炭治郎の哲学に迷いが生じるような展開だと物語が膨らむと思いますが、それを選ぶのかどうか。

今のところ次クールを追うつもりはありません。予想外の展開がありそうなら見てみます。

 

 

B フルーツバスケット 1st season (MAL: 8.07/25k)

(作画:A

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12話まで。

特に語ることもなく、安定したクオリティです。画像は11話の温泉回で、透のこのカットが妙に可愛いなと思ってチョイスしました。健全な物語なので温泉描写も健全だったのは少し残念です。

相変わらずノリが古臭かったり紋切り型が過ぎる箇所もあったりしますが、コンテが意外にダルくなってないのが頑張ってる感じがします。物語としてはまだこれからなので、今はこれくらいの調子でいいんじゃないでしょうか。

 

エピソードとしては5話、7話が良かったですね。はとりの声(興津和幸)は最初「まあこんなもんかなあ」ぐらいの印象でしたが、7話を通して描かれる彼の朴訥なキャラクターにとても良く合っていて、気に入りましたね。石見舞菜香は相変わらず素晴らしいです。今後も楽しみですね。

 

 

C どろろ (MAL: 8.34/101k)

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最終話まで見ても評価は変わらず。しかし後半クールは妙にバラエティに富んでいましたね。物議をかもした第15話のコバヤシオサム演出回や、第19話のコメディ回などが目立っていました。この2つを見比べると同じシリーズとは思えないくらいの差があります。

小林治という人物については全然知らなかったのですが、この第15話に関して言えば、引いたアングルで、つまりキャラクターのサイズが小さい中で簡単な線でアニメーションさせるというのを多用していました。これは断定は出来ませんが、現代のアニメ作品では忌避されやすい手法だと思います。アニメがフルデジタル制作になって以降、作画の粗を少なくするというのがどの作品においても至上命題のようになってきました。引いたアングルのアニメーションは線を細かくすることが出来ないので雑に見えやすいため、コンテ・レイアウトの段階でカメラから遠いキャラクターは動かさないようにするか、CGにするのが基本になってきていると僕は思います。遠い場合はCGっぽさが目立ちませんし、サイズが小さくても粗になりにくいので、CGにうってつけの役割とも言えます。

 

小林演出が結果としてどう見えるかと言えばまんが日本むかしばなし風のアニメになります。まあ確かにこれは『どろろ』なので、その手法を採用しやすい作品ではあると思いますが、とは言えいきなりこの回だけそう演出しても浮いてしまうだけでしたね。あとは単純に原画の体力不足なのでは、とも思いますが、この低品質の原因が演出家によるのか体力不足によるのかの判断は僕には出来ません。

 

画像は第17話「問答の巻」のものですが、このエピソードが一番好きです。百鬼丸が、自分に木で作った体を与えてくれた寿海と再会を果たす話ですが、脚本・コンテが素晴らしく、何より音楽が最初から最後まで充実しているし、その使い方もとても良い。どうしてこれが他の話数で出来なかったのか

寿海の声は大塚明夫、言うまでもなくこの話数を通して素晴らしい声なのですが、最後の「おっかちゃんだ」の名場面での演技はあまりにも良くて、本当に泣けます。最後に物の怪が寿海の足に食らいつく終わり方もとても良いですね。このエピソードだけならA+です。これだけは見て欲しいとは思いますが、このために16話まで見続けろというのは酷ですね。いや本当に全編このクオリティで作られていたらと思わずにはいられません。

 

最後まで見ても実に順当な終わり方で、この作品ならではの魅力というのは特に見出せませんでした。これは原作を読んでみないとわからないでしょう。パリの図書館を検索したらフランス語版を見つけたので、今度読みに行こうと思います。

 

 

C キャロル&チューズデイ (MAL: 8.21/15k)

(作画、美術:A

 

 

12話まで。

一応それっぽくまとめてはきましたね。コンテスト出場者のパフォーマンスはどれもさほど面白くはありませんでしたが、アンジェラの3回にわたるパフォーマンスは戦略も質も説得力があって、なるほどこれなら優勝しそうだと納得できるクオリティだったのは良かったです。

 

今更ながらこの作品のメイキング映像を見つけたので紹介しておきます。パート1がこちら。2、3と続いていきます。メイキングは面白いですよ、本編よりも

これを見ると僕が途中経過で言ってた文句は全く見当違いだったことがわかりますね。要するに音楽・生活文化は現代アメリカ的なもの、舞台としては近未来的なものという両方を採用しただけの話であって、音楽が未来的なものじゃないなんていうのはそれを混同しているわけです。なるほどよくわかりました。まあそれでも気に入らないのは変わりませんが

 

一番気に入らないのは、近未来を舞台にするとしてもAIという要素を登場させる必要があったのかという点。それも真面目にそれを取り扱うわけでもなく、ドラえもん的な便利ロボットとほぼ同義です。「AIを使わずに曲を作っているというのは本当か!?」「AIじゃない音楽を聴いたのは久しぶりだわ」といった流れで、主人公の音楽がもつ「にんげんのあたたかみ」というしょーもない根拠のダシとして使っているだけです。

「最新の音楽シーンをアニメでオシャレに描きたい」というのが企画の根底なのだとすれば、ど直球でアメリカを舞台にしてしまえばいいんです。それだったら生々しすぎてエンタメとしてアニメにすることが出来ないという判断で近未来の火星ということにしたのでしょうけれど、こんな中途半端な形になるくらいだったら本気で現在のアメリカを描こうとするほうがよっぽどエンタメになっただろうと僕は思います。

 

この企画における「音楽に対する誠実さ」は少しズレてると僕は思います。オーディションで歌手を募集し、彼女らの歌ってる姿・演奏する姿を丁寧にアニメにして起こす、それは結構でしょう。しかしそれは観察であって表現ではない。キャロル、チューズデイというキャラクターをミュージシャンとしての個性と結びつくような形で深掘りし、そのキャラクター性を歌い方・演奏の仕方とそのアニメで描き出す、それが真に誠実な態度なのではないでしょうか。

どうして『けいおん!』の演奏シーンがあれほどまでに胸を打つのか、よく考えてみるべきです。次クールは追いません。

 

 

C この世の果てで恋を唄う少女YU-NO (MAL: 6.39/7.5k)

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14話まで。

画像は何話か忘れましたが澪ルートの終盤ですね。ここが全編通して一番気合の入った作画だと思うのですが、いかがでしょうか。

それにしても、「カオスの強制」での戻り方はもう少しなんとかならんかったんかと思いますね。この箇所は他にも増して「これ以外にやりようがないので見逃してください」感が強いです。例えばシリーズ構成をもうちょっと計算して、話数と話数の間でルートを戻るようにするとか、たくやの意識が突然薄らいでいくようにするとか、まだその方がマシな気がします。

物語としてはこれからがようやく本番といった感じですが、特に期待はしていません。梅本アレンジ曲だけを楽しみに今後も追っていきます。

 

 

D Fairy gone フェアリーゴーン (MAL: 6.02/14k)

以前に単独記事をあげているので、そちらをご覧ください。(スコア低すぎィ! でも投票人数がそこそこいるのが面白い。わかるわかる)

 

 

以上です。

楽しみながら視聴した作品は少なかったですが、『進撃』と『さら』で十分おつりがくるクールでした。くるくーる。

今更ですが評価基準のところで「最終評価はS〜Bに収まる」とか書いておきながら全然収まってませんね。あれーおかしいな……いやこれは何故かというと、C以下の作品でも最後まで見ているのはこうやって記事にするからというのが大きいのです。ブログをやっていない頃でしたらほぼ間違いなくC以下は視聴中断していました。これが良いことなのかどうかはわかりません

 

いつも通り、ご意見は大歓迎です