2021年秋アニメ 第1話評価まとめ

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2021年10月〜12月期のアニメシリーズの各作品第1話だけの評価です。今回は7作品を紹介します。

致命的なネタバレみたいなものは避けてるので、まだ作品を見ていない方でも参考にして頂けると思います。

「名作アニメは第1話の時点で既に名作である」という持論があるので、この時点での評価がのちに急落することはあっても急騰することはないと思っています。もしあったらゴメンナサイします。

評価基準についてはこちらをご覧ください。MALはMyAnimeListの現時点のスコアと投票人数です。

ではいきましょー!

 

 

A 王様ランキング (MAL: 8.54/5.9k)

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原作未読。十日草輔が2017年から脱サラ直後のデビュー作として連載している漫画が原作。制作はWIT STUDIO、監督は今作で初監督の八田洋介。今期のノイタミナ枠。

偉大なる国王を父に持つ聾唖の少年王子のお話。作画・美術は完全に子供向けの童話風なんですが、コンテ・演出は子供だましのようなところが微塵もなく、一目見てすぐわかるほどやたら出来が良いですね。冒頭のナレーションで窪田等を起用するノイタミナらしい仕掛けも良いですし、MAYUKOの音楽もアニメのデザインに実によく合っていて素晴らしいです。

声は主役の日向未南も新人ながら楽しみではありますが、それにしてもカゲの村瀬歩にはたまげましたね。全然彼だとは気づかなかったです。これは見事なキャスティングで今後も楽しみですね。

 

制作がウィットということもあり、これは最後までこの品質を保ってくれそうな期待が十分できそうです。第1話の段階ではこの先どういう方向に話が転がっていくのか想像がつかないので、とても楽しみです。

 

 

A 86-エイティシックス- (MAL: 前半8.20 後半8.61/162k)

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原作未読。安里アサトが2017年からデビュー作として連載している小説が原作。制作はA-1 Pictures、監督は石井俊匡。今期は分割2クールの後半。

被差別民として戦争に駆り出される少年少女とそれを指揮する軍人令嬢のお話。全体的に高品質の作品なんですが、まず言及すべきは演出ですね。それをどう評価するかは人それぞれですが、シリーズ全体を通して各話ごと工夫が散りばめられていてかなり凝っています。僕はその点が気に入っているのでA評価にしています。

シナリオは、現段階では歴史的な経緯や地政学的な状況がまだまだ明かされていないので、個人的にはそこらへんにモヤモヤしたものを感じるのは正直なところです。「戦争における被差別民」という難しい題材を敢えて選んでいるからには、きちんと正面から描き切ることが出来るのか、という点については不安が残りますね。

 

とはいえ、今期の後半に入ってからますます楽しみな要素が出てきて期待が高まっています。MALスコアもその現れではないでしょうか。時間のある方は是非第1クールから見てみてください。

 

 

B+ 白い砂のアクアトープ (MAL: 7.41/17k)

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P.A.WORKS制作のオリジナルアニメ。監督はPAではおなじみ、『凪のあすから』『色づく世界の明日から』の篠原俊哉。前期から引き続いて今期は2クール目。

アイドルグループを脱退した女子高生が沖縄で同い年の水族館館長見習いの女の子と出会うお話。先述した86が凝った演出の作りなら、こちらは篠原監督らしい丁寧でかっちりした演出の作りです。ただ、ファンタジー要素が多少はあるとはいえ現実的な物語で、前半クールは「このアニメで実現したいことが何なのか」が不透明で地味なまま終わってしまったという感じは否めません。前半で蒔いた種を後半でどう花咲かせるか、期待したいところです。

 

今期の第1話(全体の第13話)の音楽、Aパートで主人公くくるの上司のテーマがバスクラリネットで登場しましたが、Bパートでも同じく上司が登場するところでそのテーマを使っています。どちらも同じ1分40秒の尺なのですが、両方ともきっちりそのシークエンスをまとめてるんですよね。こういう手法を、少なくとも最近は他の作品で見たことがないですし、演出家の腕の見せ所という感じで僕は気に入ってます。

また、人物同士の口論や上司からの叱責で話の流れが重くなるところで様々な「かるみ」をもった演出を欠かさず挟んでいて、全体のバランスの取り方も見事だなと感じます。やはりこちらも86と同様、2クール目に入ってから更に期待できそうな予感がしています。

 

MALスコアでもAmazonPrimeの評価でもそれほど目立つものではありませんが、そういった演出の丁寧さ、そしてPAらしい高品質の美術や豊かな表情作画は他作品と比べても大きな魅力だと言えるので、その点は自信をもっておすすめできます。

 

 

B 無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜 (MAL:前半8.36 後半8.61/392k)

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原作未読。理不尽な孫の手が2012年から「小説家になろう」で連載開始、その後書籍化された小説が原作。制作はこの作品のために立ち上げられたスタジオバインド、監督・シリーズ構成は『ゲーマーズ!』の岡本学。今期は分割2クール目の後半。さっきからそればっかりですね。

制作経緯から相当気合の入ったプロジェクトだなというのがわかりますが、確かにアニメの品質は非常に高いです。作画・美術・演出・音楽、どこをとっても隙がないですね。転生前の主人公の声に杉田智和を起用したのも完璧なキャスティングです。じゃあなぜB評価なのかを以下で話します。

 

まず大きく気に入らない点が二つ。一つは以前コップクラフトの第1話感想でも書いたことがありますが、この作品でも架空言語を喋らせる場面が多く登場します。話数によっては結構な尺を使うこともあるので、それに対する工夫が見られないのは残念です。もう一つは白いアイツの存在。作品全体のノリがもっと軽くて「テキトーな」調子だったら別にいいんですが、割と真面目に物語を展開させようとしているのにああいう手法を使ってしまうのはなんだかな、と思ってしまいます。今後の展開でそれがうまく解消されるような感じもしません。

そしてなにより、他の「なろう作品」とは大きく違うところが結局そんなにないんじゃないのかというのが僕の予想です。どんなにアニメの質を高めても、その枠の中で収まってしまうのならその程度にしかなりません。

アニメの表現として見るべきところがあるうちは見続けると思いますが、今後もっと、このプロジェクトに賭けるだけの本気の何かがあるのであれば、それを期待したいところですね。

 

 

B 海賊王女 (MAL: 7.62/15k)

 

 

Production I.G制作のオリジナルアニメ。監督はNetflix『B: The Beginning』の中澤一登。今期の日本放映に先駆けてクランチロールで先行配信されています。

幼い頃に船で遭難した先の娼館で育った少女がそこを脱出し再び船旅に出るお話。一見して予算が潤沢そうな作品。作画はよく動くし美術も気合入っているし、音楽も梶浦由記、声優も豪華です。まあ海外出資作品の大半がそこで止まってしまうので、この作品が同じ轍を踏まないかどうかは果たして。

 

主人公フェナ役の声が瀬戸麻沙美、僕からするとこれは当て書きなんじゃないかという気がしています。つまりキャラクター造形そのものが最初からその声を前提にしているということですね。なので当然声そのものはハマっているのですが、それとキャラクターそのものに魅力があるかどうかは別問題です。第1話の段階ではそれがさほど見えてこないので、今後どうなるか。

個人的にはここから良い方向に裏切ってくれそうな予感はほとんどないのですが、とりあえずしばらくは様子見します。

 

 

C 月とライカと吸血姫 (MAL: 7.33/6.2k)

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原作未読。牧野圭祐が2016年から執筆している小説が原作。制作はアルボアニメーション、監督は横山彰利。英語タイトルは Irina: The Vampire Cosmonaut

実際に冷戦期に起きたアメリカとソ連の宇宙開発競争を基にした、吸血鬼の存在している架空世界のお話。ここまで紹介して来た作品群に比べるとアニメそのもののクオリティは残念ながら落ちてしまいますが、個人的に冷戦期の宇宙開発競争そのものが好きなテーマなので、果たして史実をどうやって吸血鬼の物語に落とし込んでいくのか、という点だけ興味を惹かれます。

あともう一点、ヒロインのイリナの声が林原めぐみなんです。よくこのキャスティングをしたなと思うんですが、やっぱりすごいですねこの人は。ミステリアスで凛として、でも可愛らしい響きを残すような声というのは、替えが利かないなと改めて驚かされました。最後までアニメのクオリティを保ってくれることを期待したいですね。

 

 

C ブルーピリオド (MAL: 7.78/20k)

 

 

原作未読、でしたがKindleで第1巻だけ読みました。山口つばさが2017年からアフタヌーンで連載している漫画が原作。制作はSeven Arcs、総監督は舛成孝二

成績の良い不良男子高校生が美術に目覚めて美大受験を目指すお話。第1話を見て率直に思った感想は「これは原作の方が面白いだろうな」でした。実際その後漫画を読んだわけですが、その通りでしたね。

 

全体的にクオリティがイマイチなのはそうですが、まず何よりコンテ演出がよくないです。メリハリがなく淡々と脚本を流しているだけで、これではすぐに飽きられます。音楽がサボり気味なのが余計に退屈ですね。画像の渋谷を飛んでるシーンだって、ミキシングで音楽のボリュームをもう少し上げるだけでも全然違うんですけどね。

声については、龍二役の花守ゆみりは大変素晴らしいですが、森先輩役の青耶木まゆは、これは妙なキャスティングというか、狙いがあるのかないのかわからない感じですね。この声の行く末については結構興味がありますが、うーん。

アニメ化次第では相当化ける可能性もあった作品だと思うので、これは残念ですね。

 

 

以上、7作品の紹介でした。

ここ最近サボりすぎてて1年ぶりのアニメ評になってしまいました。まあ前期なんかはアクアトープとメイドラゴンしか見てませんでしたからね、そもそも書くものもなかったんですが。今後はまた定期的に感想を書けるようにしたいですね。

いつも通り、ご意見は大歓迎です。「お前は全然わかってねーな!」というお叱りをお待ちしています。もちろん挙げた以外に面白い作品があればそれも教えてください。