Michaël Levinas 生誕70周年記念コンサート 4/15@La Scala Paris [5.5]

4月15日、La Scala Paris で行われた、ミカエル・レヴィナスの生誕70周年記念コンサートに行ってきました。行く途中で例の火災が起きていたのは先日書いた通りです。

 

 

 

ここはコンサートホールではなく小劇場なので、音響もそれほど良くはありませんし、客席も傾斜が強い感じになっています。作曲家ミカエル・レヴィナスについてはWikipediaの概要をご覧ください。僕が初めて知ったのはサントリーホールで毎年行われている現代音楽のサマーフェスティバルに2008年に行ったときです。アーカイブが残っていますね。

 

 

プログラム

 

演奏はレヴィナス、グリゼーと共にスペクトル派の一人であるトリスタン・ミュライユの立ち上げた演奏団体、L’itinéraire と、2008年に高等音楽院の学生で組織された現代音楽演奏団体、Le Balcon が共同で行いました。

 

1. «Études sur un piano espace»(1977、改作2010)

最初はピアノソロのライブエレクトロニクス作品。レヴィナスはピアニストでもあるので、初演は20代の頃の彼自身が行いました。

オクターブほどの間隔のトリルを両手でやるのが主な素材で、電子音はホワイトノイズのようなものがピアノに反応するだけです。一貫性はあって雰囲気は悪くないのですが、テクニックとして目を引くものはなく、ライブエレクトロニクスとしてもそれほど面白くはなかったです。3.5。

 

2. Gérard Grisey (1946-1998) «D’eau et de pierre»(1972)

この作品だけグリゼーのものです。グリゼーの代表作である『音響空間』«Les Espaces acoustiques»(1974-1985)よりも前の作品です。ちなみに先述したサントリーホールのサマーフェスに行ったのはこの曲の日本初演があったからなんです。

フルート、クラリネット、バスーン、ホルンと弦楽器群のグループが左に、オーボエ、コーラングレ、ソプラノクラリネット、金管と打楽器二人のグループが右に分かれて演奏する作品。打楽器以外は各奏者一人ずつの室内オーケストラです。

先述した Le Balcon を立ち上げた Maxime Pascal が指揮していたのですが、この日の指揮ぶりを見る限り、まだ経験が浅いような感じがあります。ただ誰にとっても難しいのも事実でしょう。そもそも狭いスペースで音響も難しくて、打楽器二人がかなりせわしなく動いてるのを見ると苦労がしのばれます。作品自体も長大な割に見所がなくて飽きやすいです。3.0。

 

 

 

3. «Le Poème battu»(2009)

バリトンと打楽器、ピアノとライブエレクトロニクスの作品。ボーカルはやや時間差のある音声合成のディレイが全体的にかかっています。バリトンの顔の近くにスネアドラムが置かれ、ときどきそこに向かって喋るとスネアが反響する仕組みになっています。歌うことはなく、ひたすら独特なリズムで詩を朗読するだけです。

朗読の声はとても良かったですが、打楽器とピアノはほとんど賑やかしみたいな感じでもったいない印象。言葉遊びの詩を活かした楽しげな作品ではありました。4.5。

Youtubeに映像があったので紹介しておきます。

 

Lévinas: Le Poème battu • Le Balcon

 

 

 

4. «Préfixes»(1991、改作2019初演)

最後は室内オーケストラ作品。ですが、シンセサイザーが2台あって、それが中心的な役割を担っています。ただシンセサイザーの各キーには音高のある音はほとんどマッピングされておらず、様々な具体音のシークエンスやノイズなどがマッピングされていました。これだけだったらライブエレクトロニクスでもないしミクストミュージックでもないですが、作曲者が「異なる楽器同士の、異なる属性の音の音声合成の研究」と言っているので、他にも何か電子的な仕掛けがあったのだろうと思います。

具体的な音としては、短いアタックの音がだんだん早くなってその後遅くなっていく、というのがメインの素材です。イメージとしては、

.        .     .    .  . … . .  .   .    .      .

こんな感じの音です。これが電子音や楽器のアンサンブルで色々と組み合わさるイメージですね。

 

 

 

後ろに8つ並んでいるのがタイゴングで、その手前にある金色の丸いのがアンティークシンバル、またはクロタイルと呼ばれる打楽器です。これを1つだけ使うのは珍しいのですが、不安定な状態で吊り下げることで、叩くと揺れながらぐわんぐわん鳴るという周期的な空間音響を生み出していました。曲の終わりでもこれを叩いていたのですが、この音が終わるタイミングが予測がつかないので、ちょっとしたギャンブル要素ですね。今回はやや間延びした感じもありましたが、音そのものはいい感じに収束していました。できるなら作品の仕掛けを十分に理解した上でもう一度聴きたいところではありますね。5.5。

 

 

 

 

せっかくなのでこれを書きながらYoutubeで彼の作品をいろいろ探していました。僕が気に入ったものを一つ紹介します。バイオリン以外の弦楽器群と打楽器とピアノと録音素材のミクストミュージック作品です。これは是非一度生で聴いてみたいものですね。

 

Michaël Levinas – Troisième arcade – « Le chœur des arches »