2019年冬アニメ 第1話評価まとめ

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2019年1月〜3月期のアニメシリーズの各作品第1話だけの評価です。今回は9作品を紹介します。

致命的なネタバレみたいなものは避けてるので、まだ作品を見ていない方でも参考にして頂けると思います。

「名作アニメは第1話の時点で既に名作である」という持論があるので、この時点での評価がのちに急落することはあっても急騰することはないと思っています。もしあったらゴメンナサイします。

評価基準についてはこちらをご覧ください。MALはMyAnimeListの現時点のスコアと投票人数です。

ではいきましょー!

 

A+ 荒野のコトブキ飛行隊
MAL: 6.35/1.2k

 

 

見よ、これが水島努だ!

冒頭いきなりのタイトル出し、5人娘の会話シーン、CM明けて音楽だけの始動準備シークエンス、その後の発進の長回し、新人を上手に起用しながらサプライズも忘れないキャスティング、大迫力の空戦音響、ヒロイン(キリエ、画像の娘)の豊かな表情つけ、「船長が飛んだ、キリエの帰還だ!」、全てが水島監督の魅力満載です。

水島努のすごさは何と言っても、音響監督をも同時にこなす点です。キャスティング・ディレクションから音楽・効果音の付け方まで、コンテと音が見事に融合するとこんなにも作品の充実度が違うのかということをいつも教えてくれます。

ほぼフル3Dの作品ですが、冒頭の男性陣は2Dです。こういった部分が気に入らないという声もありますが、僕はむしろ積極的に空戦を描いていくつもりなのだろうという意欲の表れと捉えているので、全然構いません。(全部を2Dまたは3Dに統一して予算やスケジュールを食い潰されるくらいなら魅せるべき部分に徹底的にこだわる意欲、という意味です)

長回しのときに初めて巨大飛空挺を見せることで「これまでのは全部飛空挺内での話だったのかよ!」というガルパンを踏襲した遊び心も良いですね。僕はレシプロ戦闘機について全然詳しくありませんが、それでもワクワクさせてくれるこの演出力、さすがと言わざるを得ません。劇中の細かい描写は有志が沢山解説してくれているので、それはそれで勉強させてもらいます。

この作品は僕にとっての「生きる希望」枠になること間違い無いでしょう。ああ生きてて良かった

 

 

A かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~
MAL: 8.06/13.3k

 

 

原作未読。良いですね。特にOPは文句なくSです。

作画は高水準でコンテも安定感があります。キャスティングも良いですね。主役二人とも僕は知らなかったのですが(かぐや:古賀葵、御行:古川慎)、いずれも非常にマッチしているだけじゃなく、キャラクターの魅力をとても引き出しています。音響監督はやはり明田川仁、さすがですね。

音楽のパロディーも大変効果的でしたねー。海外の人にはほぼ伝わらないでしょうけれど、日本人ならニヤっとしてしまうでしょう。

とにかく全体が高水準で、このクオリティが保てれば相当人気作になるでしょうね。楽しみな一作です。

 

 

A 約束のネバーランド
MAL: 8.72/25.6k

 

 

原作未読。スコア高っけーなあ。もともと原作が海外でも人気だからだと思いますが、アニメも非常に良い出来です。

導入部分なので説明的な台詞回しが気にはなりますが、まあお約束と言えなくもないです。画像は中間部の鬼ごっこのシーンですが、1話ではここが一番気に入りました。この時計の演出も良いですが、音楽が素晴らしいんですよね。終盤エマが泣き出した後の音楽も素晴らしい。少し穏やかな音楽をあそこで始めてその後に繋げていくシークエンス、見事でした。今後の劇伴にも注目していきたいところ。

主役キャスト3人の中で、ノーマン(声:内田真礼)は非常に素晴らしいです。先と同じシーンでエマに対する絞り出すような声は圧巻でした。エマ(声:諸星すみれ)もジャンプヒロインらしい声で良いです。まだ10代ですから、大したものですよね。

ジャンプらしい王道的な導入でしたが、今後これをどう調理していくのか。意欲的な演出を続けていってくれることを期待したいです。

 

 

B どろろ
MAL: 8.43/17.5k

 

 

原作未読。最近流行りの古典作品リメイクの系譜。

全体的に悪くはないですが、コンテはやや平凡。音楽は控えめにしか使わない方針のようですが、それもあまり効果的ではなく、むしろ物足りなさを助長していると思います。

問題はキャスティングですね。どろろ(声:鈴木梨央)に子役を起用しているわけですが、これをどう判断するか。子役を上手に使うのはアニメに限らず非常に難しいです。アニメの中で子役が完璧にハマってた作品はごくわずかだと僕は思ってます。最近の中なら「ばらかもん」ぐらいでしょうかね。最近でもないのかな…

とにかく今作の場合は、少なくとも素直に良いとは思えません。おそらく劇中で一番セリフの多いキャラクターなので、彼女が作品の中に占める負担はかなりのものでしょう。果たしてどうなるか、見守っていきましょう。

 

 

C ブギーポップは笑わない
MAL: 7.13/9.5k

 

 

原作未読。第1話の印象はかなり良くないです。単純に制作の力不足やコンテの貧弱さが前面に出てしまっていて、それだけで離れてしまう人も多いと思われます。

アニメにおいてコンテ・演出がどれだけの比重を占めているのか、この第1話を見るだけでよくわかると思います。話がわかりづらいとか、そういう次元の問題だけではありません。レイアウトと時間軸上の構成と、狙いをもってそれらを練り上げないとこれほどまでにアニメは貧弱になってしまうのです

数少ない語るべき点は、ブギーポップの声(悠木碧)と音楽です。悠木碧はまだ若手ながら現在最も実力のある(と思ってます)声優の一人で、もちろん今作でも素晴らしいには違いないのですが、その魅力を引き出せているのかどうか。あの特徴的なディレクションの判断は現時点では何とも言えないですが、僕としては若干懐疑的です。

音楽は牛尾憲輔。最近では『映画 聲の形』や『ピンポン THE ANIMATION』で知られています。これも音楽そのものは非常に魅力的ですが、その使い方がどうか。第1話では一部でぶつ切りにしたりしてますが、効果的ではないでしょう。『荒野〜』や『約束〜』と対照的に、コンテと音とが噛み合っていない代表例です。

声と音楽が彼らでなければ間違いなくD評価でしたが、原作そのものは面白いのだろうと思うので、徹底的にダメにしてしまうことだけは避けられるように祈りましょう。

 

 

C ケムリクサ
MAL: 5.52/1.2k

 

 

スコア低いですねー。『荒野〜』が海外勢には早すぎるので評価されないのはわかりますが、果たしてこれも同じなのかどうか。

シーズン前は後述する『けものフレンズ2』と並んで最も話題となった作品。その理由が知りたければ適当に検索してください。別に書くほどのことでもありません。

「単純に良いとは言い難い」というのが平均的な意見かと思われます。たつき監督(&ヤオヨロズ)の制作は非常に個性的で、人を選ぶ作風です。アニメーションとしての総合的な完成度は追求せず、描くべきものだけに注力されているからです。それはシナリオやコンテだけじゃなく、3Dのキャラクター造形や動かし方にも通ずるところです。

今作も『けものフレンズ』と同じで、やはり「人物の関係性」と「世界観の明かし方」に一番重きが置かれています。それをどこまで描き切ることができるか、そこが評価の中心になっていくでしょう。

さて問題となっているのは「わかば(声:野島健児)」のキャラクター造形ですね。第一印象が良くないのは僕もそう思います。しかしそれこそが作品の鍵になってる部分なので、単純に「もっとこうすればいい」と言えないのが難しいのです。僕自身はそれよりも主役の「りん(声:小松未可子)」のキャラクター造形の方が心配です。第1話時点ではステレオタイプなキャラクターになってしまいそうな雰囲気なので、それで台無しになってしまうのは勿体無いと思います。

いずれにしろ、画面が豪華じゃない分脚本と演出で頑張り続けるしかないので、中だるみを一切せずに走り切れたら面白くなりそうな予感はあります。

 

 

C ドメスティックな彼女
MAL: 7.62/8.5k

 

 

原作既読。一言で言います。もったいない!

原作はいかにもマガジンらしい、ギャグ的ちょいエロちょいシリアスの王道ラブコメです。しかしなぜこれほどの人気があるのかと言えば、ちょいエロを是が非でも見たくなる高い画力と、瑠衣というキャラクター造形の魅力のおかげでしょう。

そう、まさしくこの瑠衣を魅力的に描けるのかどうか、それがアニメ化成功の鍵を握っているのです。、アニメでは早くもその舵取りに失敗してしまいました

アニメと原作の一番の違いは「軽さ」です。原作はキャラクターのデフォルメ表現も多用し、表情もギャグっぽく崩す場面が結構あるのです。それは瑠衣とて例外ではなく、本来の瑠衣のキャラクターはもっとおどけて表情豊かなんです。原作を読んだことがない方は最初の部分だけで構わないので一度読んでみてください。アニメとの違いが明らかにわかるでしょう。

そういうおどけたり、斜に構えたり、案外コロコロ表情が変わる瑠衣だからこそ「あの冒頭」の導入とのギャップが活きるのに、それを! それを!

とにかく全体をもっとライトに、演出もテンポもギャグっぽい路線を主軸にすべきでした。本作では変に真面目に三角関係を描こうとしてますが、それは間違いなく悪手だったと断言できます。こういう基本をとりまとめるのがプロデュース側の仕事なので、やはりそこで作品の命運が決まってしまうことはよくあるのです。

キャスティングは良いのが余計にもったいないですね。瑠衣(声:内田真礼)は『約束〜』のノーマンと同じです。この比較だけで彼女の実力がよくわかります。ああ、本当に残念でなりません。

 

 

 

C revisions リヴィジョンズ
MAL: 6.54/1.3k

 

 

今期ロボット枠。監督は谷口悟朗、説明は不要ですね。

ほぼフル3Dですが、CG表現があまり魅力的ではないです。『荒野〜』と比較すると同じ3Dでも鮮明に違いがわかりますね。質ではなく方針、「3Dとどう向き合うか」の違いでしょう。こちらの場合は(作品の性質上当然ですが)キャラクターが全身を使って演技するカットが多いですが、その演技づけが妙にわざとらしいのが目につきます。これを単に技術力が低いと言ってよいのかどうかはわかりません。

会話もテンポそのものは良いはずなのに、『荒野〜』と違って冗長さの方が目立ちます。モブに喋らせるセリフも「いかにもモブが喋ってます!」と言わんばかりです。

主人公のキャラクター造形はちょっと面白そうです。世界の変革を不謹慎にも望み続け、痛々しいことを周りから指摘されても本人はむしろ誇りにしていて、実際に危機が訪れたときに「そら見たことか!」と調子付くも、いざ生命の危機に相対したときには何も動けなくなってしまうという、まあこれだけ書けばいいとこなしなんですが、そういうのを主人公に据えて物語をどう転がすのかは見てみたくもあります。

このままいまいちなコンテが続くようだと視聴をやめてしまいそうですが、明確にダレてくるまでは見るつもりです。

 

 

D けものフレンズ2
MAL: 5.82/0.6k

 

 

始まる前から厄を背負ってしまった作品。しかしピンチはチャンスでもあるので、望みはあったのですが…

説明不要の凡作以下です。「何を面白がってもらうのか」という狙いが一切ありません。一期は決してそういう意味で頭の悪い作品ではありませんでした。『ケムリクサ』でも書いた通り、たつき監督には明確に描こうとするものがあって、それは第1話から既に鮮明に詳細に描かれていました。一方で今作は「徹底しているもの」がなく、説明書付きの工作キットをそのまま仕上げただけのものです。コンテも自然と貧弱になります。

語るべきはサーバル(声:尾崎由香)の声についてでしょう。今作で彼女は明らかに以前より上手くなってます。新人が2年研鑽を積めばこれくらい変わるわけです。これはディレクションが変わったからではありません。実力がついて洗練された結果です。声優個人として見れば、今の方が明らかに魅力的です

さて。では『けものフレンズ』という作品におけるサーバルというキャラクターにおいてはどちらが魅力だったのかと問われればそれはまた話が別だというのが面白く、難しいところなんです。ジブリの声優問題にも通ずることですね。

かつての『けものフレンズ』のサーバルの声は、これこそキャスティングの醍醐味と言える部分ですが、「作品そのものと不可分の領域」に属するものでした。それはCGのデザインから世界観の設計から脚本から演出からしんざきおにいさんに至るまで、全体に亘る方向性とぴったり一致していたということです。そういうのをまとめ上げる能力のある人が監督になるわけです

一方で『2』ではその方向性がもはや共有できないわけですから、また一から作り直さなくちゃいけないのですが、大事なのは「本当に一から作る気があるのか?」という点に尽きると思います。仮に何かを借りてくるとしても、その残り香を徹底的に消し去るか、あるいは残り香を使って予想外の方向性へ導こうとするか、とにかく徹底しなくちゃいけないのです。

つまり、このアニメの企画の曖昧さとサーバルの声問題とはまったく根っこが同じということです。工作キットをそのまま組み立てただけでもある程度魅力を出せる人はいます。しかしそれは先に挙げた悠木碧みたいなごく一部の人に限った話で、少々うまくなった新人にできる芸当じゃありません。作品全体がこういう感じです。

 

 

 

以上で今期1話評を終わりにします。長すぎる…

また3話か4話で中間報告を上げて、あとは総評ですね。しかし第1話時点でA以上の作品が3つもあるのは自分の中ではかなり豊作です。今期は楽しいアニメライフが送れそうです。

いつものことですが、ご意見は大歓迎です。むしろ「お前は全然見方がわかってねーよ!」と言われたいのです。もちろん挙げた以外に面白い作品があればそれも教えてください。