2024年春アニメ 第1話評価まとめ

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2024年4月〜6月期のアニメシリーズの各作品第1話だけの評価です。今回は10作品を紹介します。

この企画最後にやったのが2021年秋ということでかなり久々になります。正直この記事を書くのは結構大変なのでずっとサボっていたわけですが、たまたま今回はそこそこの数の作品をチェックしたので、まあどうせならということで書いてみます。

 

致命的なネタバレみたいなものは避けてるので、まだ作品を見ていない方でも参考にして頂けると思います。

評価基準についてはこちらをご覧ください。MALはMyAnimeListの現時点のスコアと投票人数です。

ではいきましょう。

 

 

A 響け!ユーフォニアム3 (MAL: 8.60/3.1k)

PrimeVideo

 

武田綾乃の小説が原作。2015年にアニメ第1期が放映され、その後第2期、複数の劇場版が制作され、今回の第3期に至る。制作は京都アニメーション、監督は石原立也

物語の時系列で並べると、

第1期→第2期→『誓いのフィナーレ』→『アンサンブルコンテスト』→第3期

となるわけですが、2019年に『誓いのフィナーレ』が公開されたその3ヶ月後に、京アニ放火事件が起こりました。主要スタッフを務めていた方も多く亡くなり、制作陣の変更を余儀なくされました。大きいところで言うと、キャラデザ・総作監が亡くなられた池田晶子さんから池田和美に引き継がれ、第2期までシリーズ演出という役職で関わっていた山田尚子が京アニを離れたため、代わりに副監督を立て、それを小川太一が務めています。

 

 

アニメ制作にあまり詳しくない人向けに簡単に説明しますと、「キャラクターデザイン」というのは作画部門の一番大事な土台となる役職で、そのシリーズにおける全ての原画作業の基礎を作る仕事です。なのでユーフォのように複数のシーズンにまたがる作品では、たとえデザインに大きな変更がなかったとしてもシリーズが変わる度に新たにキャラデザを起こすのは珍しくありません(もちろん全部のケースがそうではありませんが)。

特にユーフォの場合は物語内で時系列が進んでいますから、それに合わせてキャラデザを変えるのは自然なことでしょう。細かく言うと『誓いのフィナーレ』(キャラクターデザイン:池田晶子)でそれまでより少し大人びたキャラデザになり、第3期はそれを受け継ぐ形になっています。長くなってしまいましたが、要は今回のキャラデザに池田晶子・池田和美両名がクレジットされているのはそういう背景がありますよ、という話でした。

 

『響け!ユーフォニアム』の劇伴音楽の使い方
最初に申し上げておきますが、今回の内容は非常にマニアックです。興味のない人にはまったく退屈な話だと思いますが、ただ前知識がないと理解できないような内容ではないので、よろしければお付き合いください。 まず今期で僕が見ているアニメなんですが、第...

 

個人的には、この春アニメの目玉といいますか、もはや生きる目的と化していると言えるほど楽しみにしています。正直なことを申し上げれば、以前にユーフォの劇伴分析の記事の冒頭で書いた通り、石原監督と山田尚子のタッグで見たかった、という気持ちはあります。ですが新たな体制で復活した京都アニメーションが、これまでと違った魅力を発揮してくれることも大いに期待しています。

音楽はもちろん松田彬人が続投。第1話から早速素晴らしい音楽の数々が嬉しいですね。コンクールの自由曲も彼の書き下ろしでしょうから、非常に楽しみです。

ユーフォについては語りたいことがたくさんあるので、僕の体力に余裕があれば今期の各話感想の記事も書ければいいなあと思っています。書ければ。ればれば。

 

 

B+ 終末トレインどこへいく? (MAL: 7.36/4.3k)

PrimeVideo

 

EMTスクエアード制作のオリジナルアニメ。監督は水島努。シリーズ構成横手美智子、演出チーフ菅沼芙実彦なども水島作品ではお馴染みのメンツ。音響周りもいつメンなのですが、音楽は浜口史郎ではなく辻林美穂が担当。

ある日突然変異した日本で、埼玉近郊で暮らす女子高生たちが、いなくなった友達を探しに電車の旅に出るお話。何言ってるかわからんと思いますがこれが水島オリジナルというやつです。

世間ではさっそく「これは『迷家』の系譜ではないか」と評されていますが、僕としてはあれと比べると今作の方がよっぽど狙いが明確に作られているので、まあ作品の方向性が迷子になることはないんじゃないかなと思っています。驚きをこまめに入れていく脚本と演出、全てが謎に包まれた状況の中でも少しずつヒントが明かされていく感覚、洪水のようなセリフの応酬など、いつもの水島作品の魅力はこの第1話でも十分に発揮されています。

 

さて水島作品といえばまずキャスティングには注目したいところ。画像の左端の黒髪おかっぱの子、僕がロリ声四天王と勝手に呼んでいるうちの一人である木野日菜が演じていますが、このなんと言いますか、「青春長編アニメで初めて声優をやることになった子役出身の10代の女の子」のある声がすごいですね。いやこれは全然馬鹿にしているわけではなく、非常に好意的に評価しています。そもそもディレクションを監督自身が行なっているわけですから、まさにこれが狙い通りなのです。

隣のギャルの声は久遠エリサ、僕は全然知りませんでしたが、フィリピン出身の声優なんですね。主演経験はほとんどないようですが、いやすごく上手ですよ。こういう隠れた逸材を毎度拾ってくるのがさすがです。他二人の安済知佳和氣あず未はもはや言うまでもないですね。僕自身も以前から非常に素晴らしいと思っている声優二人なので、それが主演で抜擢されるのは僕としても嬉しく思います。

 

第1話のラストや、第2話のピンチのときなど、辻林美穂の音楽がこれまでの水島作品にはなかった新たなテイストを生んでいます。ゲーム音楽っぽさもあり僕の好みでもあるので、これも今後が楽しみですね。

 

 

B となりの妖怪さん (MAL: 7.02/1.3k)

PrimeVideo

 

nohoが2017年にTwitterで発表し、その後単行本化された漫画が原作。制作はライデンフィルム、監督は山内愛弥

妖怪と人間が共存する片田舎で暮らす少女のお話。冒頭もそうですし、その後のアイスを食べるカットなど、目を引く作画が特徴的ですね。アニメーションのクオリティは高いです。基本的には妖怪モノによくある「やさしいせかい」系のお話だと思いますが、終盤で明かされるちょっとした陰の部分もあり、それが今後どう活かされていくのかが注目です。

 

少女の声は結川あさき、新人でこれが初主演です。新人っぽさもありますがとても上手で、作品の雰囲気も相まってこのキャラクターを演じるのに最適なタイミングじゃないかなと思います。素晴らしいキャスティングですね。

 

 

B 狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF (MAL: 8.24/13k)

PrimeVideo

 

支倉凍砂の小説が原作。2008年に一度アニメ化されているが、今作はその続きではなくリバイバル企画として物語冒頭から描いていく。当時の監督である高橋丈夫が総監督となり、各話演出で参加していたさんぺい聖が監督を務める。制作はパッショーネ

狼の耳と尻尾をもつ少女と商人の男が出会い旅するお話。前のアニメ化のときは僕も見ていましたが、当時アニメファンから非常に評価が高かったと記憶しています。経済史のエッセンスを取り入れた商取引の駆け引きやトラブルなどが見所ですし、わっちは可愛いし、そりゃ人気にもなるよねって感じです。

 

音楽はKevin Penkin。『メイドインアビス』以降その名前はすっかり知れ渡って、今では大変な売れっ子です。前クールの『薬屋のひとりごと』でも音楽の一部を担当していました。彼の得意とする中世ファンタジー風の音楽は今作にぴったりでしょう。

僕自身は内容をもう知っているので新鮮な驚きはないとは思いますが、丁寧なリメイクが期待できるので追ってみようと思います。見たことない人にはおすすめしやすい作品です。

 

 

B 変人のサラダボウル (MAL: 7.21/3.8k)

PrimeVideo

 

『僕は友達が少ない』の平坂読が2021年から刊行している小説が原作。制作はSynergySPスタジオコメット、監督は佐藤まさふみ

異世界からワープしてきた皇女が探偵業の男と共に生活するお話。ザ・ラノベって感じなので個人的にはそれほど惹かれるものはないのですが、脚本もコンテも作画も、ちゃんとしてるなあとは正直思ってしまいますね。ご都合主義と言われるのを恐れず、整合性を確保するための余計な説明とかは全部省いて、キャラクターの描写や掛け合いに注力するというのは正解だと思います。

キャラクター原案のカントクのかわいらしい女の子のデザインをうまくキャラデザに落とし込んでいますし、動きなんかも丁寧でいいですね。「頭を空っぽにして気楽に見れるアニメ」であるのは間違いないんですが、それをちゃんと作るのはそう簡単ではないというのを再認識させられました。

 

 

B ゆるキャン△SEASON3 (MAL: 8.45/4.8k)

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あfろが2015年から連載している漫画が原作。2018年にアニメ第1期が放映され、3年後に第2期、さらに3年後に今作という流れ。制作はこれまでのC-Stationから変わってエイトビット。監督は登坂晋

今期から制作スタジオが変わってキャラデザも変わったので、それに対する戸惑いの声が少なからず挙がっています。僕としてはどちらでもいいかなと思う一方で、まあこれは良い悪いではないのですが、「仮に第1期がこのキャラデザだったらこれほどのヒットはなかったんじゃないかな」という印象はあります。なんでそう思うのかと言われるとなかなか説明が難しいのですが、今期のキャラデザの方が「原作に寄っている」という評判は確実にあるということは、まさにこれがキャラデザという仕事の難しさ、奥深さを物語っているのでは、と思いますね。

 

ただまあ僕としては「ゆるキャンの半分は音楽で出来ている」と思っているので、音楽の立山秋航がそのまま続投しているのは良いことでしょうね。人気作の続編を全く違う体制で作るのは難しいと思いますが、それをどう乗り越えるのかが注目です。

 

 

B 夜のクラゲは泳げない (MAL: 8.05/5.6k)

PrimeVideo

 

動画工房制作のオリジナルアニメ。監督は竹下良平。シリーズ構成はこれがアニメ脚本初挑戦となる小説家の屋久ユウキ

幼い頃から絵の才能に溢れつつも今は描くことから離れてしまった女の子が、騒動を起こしてアイドルをやめてしまった女の子と出会うお話。「ワナビーもの」とでもいいましょうか、「何者かになりたい」という若者が奮闘する系の物語です。

 

おそらくこの企画自体が、キャラクターと同じ10代の子向けに刺さるように作りたい、ということだと思うのですが、わかりやすさのためにセリフが全部くどいな、という印象です。キャラクターが喋っているというより、テーマ性の主張や筋立てのために喋らされている感じです。

ニコニコで第1話を見ていたら開始から4分あたりで「ここまで全部説明セリフで草」というコメントがありましたが、まさにそういう印象を持たれても無理はない書き方だなと思います。小説と違った脚本の難しさというのを、こういうのを見るにつけ思いますね。

 

なのでC評価にしようかなと迷ったのですが、オリジナルアニメは頑張ってほしいな、ということでBにしています。散々CMを打って、声優も売れっ子を揃えて、美術や作画は高品質で、相当気合い入れて作られているのは間違いないので、今後の巻き返しに期待したいところです。

 

 

C アストロノオト (MAL: 6.52/2.1k)

PrimeVideo

 

テレコム・アニメーションフィルム制作のオリジナルアニメ。総監督は『銀魂』や『坂本ですが?』などギャグ系作品を数多く手掛けてきた高松信司、監督は春日森春木。シリーズ構成は今期2クール目の『ダンジョン飯』も務めているうえのきみこ

失職した料理人の男があるアパートの女性大家さんと出会うお話。『めぞん一刻』のオマージュ作品であるのは一目見てわかるのですが、第2話でそれが作品内でも明示されていました。

なんと言っても目を引くのは色鮮やかな美術と、窪之内英策の味のあるキャラデザ、そして昭和“風”の塗りやギャグ作画ですね。そういうアニメーションの実験室的な面白さはあるのですが、シナリオやギャグが面白いかと言われると、うーんという感じ。「それっぽいテイスト」だけでシリーズを最後まで保たせるのは厳しいので、それだけじゃない魅力に期待したいところ。

ともあれ、優れたOP作家として知られる山下清悟が手がけるOPは一見の価値ありなので、一度見てみてください。(Youtube

 

 

C オーイ!とんぼ (MAL: 6.60/0.8k)

PrimeVideo

 

かわさき健・古沢優が2014年から週刊ゴルフダイジェストで連載している漫画が原作。制作はOLM、監督はオ ジング

鹿児島と沖縄の間にあるトカラ列島に住む少女が、島にやってきた元プロゴルファーの男に才を見出されるお話。なぜこの作品のアニメ化企画が通ったのかはなんですが、確かにこの設定と冒頭の展開はちょっと心惹かれるものがあります。必然的にこの男が少女の技術的才能の解説をするわけですが、それが実にマニアックなところが面白いですね。スイングの作画なんかはさすがよく描けています。

少女の声ははやしりか、今作初主演の新人です。妖怪さんと同様、こちらも新人っぽさが良い塩梅で作品の方向性と合っていて、見事なキャスティングだと思います。しかしまあ最近の初主演の声優さんはみんな上手で、さすが苛烈な競争を勝ち抜いてきただけあるなと感心しきりです。

 

制作スタジオも監督も子供向けアニメがメインなので、本作も実に健康的です。健康的というのは良くも悪くもで、お行儀の良さが退屈な方向へ行ってしまわないことを祈ります。

 

 

これは雑談なんですが、作中でトカラ馬に触れる場面があります。セリフにある通りこれは数少ない日本の在来種の一種で、ポニーくらいの大きさの馬です。日頃競馬に熱中していながらこうした在来種については全然知らなかったなと恥入るばかりです。もし競馬で大きく勝つ日がきたら、こうした在来種に会いに回る旅をして、保存のための寄付でもしたいですね。夢が一つできました。

 

 

D ザ・ファブル (MAL: 6.91/2.6k)

 

PrimeVideo

 

南勝久が2019年までヤンマガで連載していた漫画が原作。制作は手塚プロダクション、監督はあの『ボトムズ』を手掛けた髙橋良輔、御年81歳。ネット配信はディズニープラスの独占で他媒体は都度課金制。(第1話は無料)

凄腕の殺し屋である青年が、ボスの命令で殺しを禁じられ一般人として生活を始めるお話。まあギャグが多めの作品なんですが、そのギャグのテンポが独特で、これは賛否が別れるところなんじゃないかと思いますね。僕としてはさすがにちょっと間延びしすぎかなという印象は拭えません。

これに限らず、間延びしたテンポ、いわばダルいコンテのときは声優さんの喋りが難しくなるんですよね。早口で喋る方が一見難しそうに思えますが、多少無理に時間を埋めるような喋りはもっと難しいです。ですが主役の二人、興津和幸沢城みゆきは上手いことそのテンポでもやってのけています。特に沢城みゆきはまあ相変わらず、さすがですね。おバカキャラのヌケ具合が見事です。

 

作画面でも演出面でもそれほどの見所がなかったなという感想です。原作は面白そうなんでちょっと興味が出ましたけどね。

 

 

以上、10作品の紹介でした。

他には『ダンジョン飯』が今期も続いています。これは僕の中で前期のアニメ大賞なので、続きもとても楽しみです。あとは『無職転生』の新しいシーズンが始まって、まあここまで見続けたので見てみます。そうなると相当本数が多くなるので、今回紹介した作品も見なくなるのが多いだろうと思いますね。

 

いつも通り、ご意見は大歓迎です。お気軽にどうぞ。