8日目(9月14日 土曜日)
09:30
のんびり起床。自分一人だけの部屋というのはなんと安眠できることか……パリにはこんな贅沢な民泊はそもそも存在しないし、仮に近いものがあったとしても星付きホテル並みの金を取られるのは間違いないので、こういうところもローマの魅力の一つですね。ここ以外にも部屋が広い民泊は結構多くありましたから。
さてこの日は12時半からヴァチカン美術館の予約を入れてあるので、その前に軽く昼ごはんを食べて向かいます。
メトロでヴァチカンに移動した後、近所で適当なランチカフェを発見。
飲み物付きのランチプレートが10ユーロ程度です。それでもこんなに盛り盛りなのがすごい。味は普通でした。
投げ売りにもほどがある。美術館などで売ってるミニチュア模型なんかは露店だとこうしてかなり安く買えます。出来もそれほど大差はないように見えます。
ヴァチカンに近づいていくとチケットのダフ屋が跋扈しています。この写真にも5、6人は写ってるくらい多いです。何度も声をかけられますが全て無視してずんずん進みましょう。
これが美術館入口。行列がずーっと続いてるのがわかりますか。予約なしだと炎天下の中ここに並び続けなければいけないわけです。ダフ屋が横行するのも納得ですね。
事前に予約をしている場合は専用のレーンに並んで入場します。今回僕は一ヶ月以上前に予約をとったのですが、そのとき見た限りでは1、2週間後まではほぼ売り切れ、この日も空いてる中では12時半が一番早くて、それより早い時間は売り切れていました。予約難易度はウフィツィ美術館以上でしょうね。
荷物検査のあとリュックを預けて中へ。日本語の案内もそこそこあります。オーディオガイドを買っていざ入場。
入口の螺旋階段の途中になぜかアイヌの写真がありましたが、横に並べてある模型は全然アイヌと関係ありません。なんでこんな雑な展示をしてるんでしょうね。
美術館のルートマップです。最初に古代文明の展示や彫刻群があり、後半に「ラファエロの間」を通過した後、一番最後にシスティーナ礼拝堂があります。
ピーニャの中庭が見えますが、暑いのであまり出歩きたくはないですね……
ナイル川の神。こういうのを擬神化とでも呼ぶのでしょうか。
アヌビス神。
お次は彫刻の回廊。
ウフィツィ美術館同様、こちらにもローマ皇帝の彫像がたくさんあります。
ギリシャの女神アテナ。ローマではミネルヴァ。威圧感がある目つきです。ローマ皇帝以外の彫刻作品はこのようなギリシャの模刻が多いです。紀元1〜3世紀のローマではギリシャの、特にポリュクレイトスの模刻が多く作られ、彫刻の理想とされていました。2日目のウフィツィでもトルソーの模刻を紹介しましたね。
このミネルヴァは古代ギリシャで典型的なアクロリート(acrolito)、顔などの重要なパーツだけは石で作り、衣服などは木や他の材料で作る製法です。なのでオリジナルの作品には胴体があったはずですが、模刻なので顔だけを作ったということでしょう。
2代目皇帝ティベリウス。
トライアヌス。
新回廊ブラッチョ・ヌオーヴォ(Braccio Nuovo)。「古代の作品に相応しい展示方法は、古代を彷彿とさせる装置に置かれることだ」という理念のもと19世紀前半に作られた部屋。
11代皇帝ドミティアヌス。解説によると、もとはネロの彫像だったものが、ネロは元老院から記録抹殺刑を受けたため、その首だけをすげ替えて作られたもの。ローマ皇帝の彫像は首のすげ替えが割とあるようで、首に線が入ってるものがいくつもありました。しかしそのドミティアヌスにしても後に同じ刑を食らってしまうのですが。
2日目のウフィツィにもあったドリュポーロス(槍を持つ人)、もちろんこれもポリュクレイトスの模刻です。
目玉作品の一つ、プリマポルタのアウグストゥス。詳細はWikipediaに単独記事があったのでそちらをどうぞ。
先ほども登場したナイル神の像。かつてナポレオンがこれを奪ってルーブル美術館に収蔵していたものを、ヴァチカンが苦労して買い戻したそうな。
手傷を負ったアマゾン。これも例によってポリュクレイトスの模刻。当時の彫刻コンクールでこの「手傷を負ったアマゾン」のテーマでいくつも作品が作られたそうですが、ポリュクレイトスの作品が圧倒的に評価され優勝したという。
新回廊は作品も空間もとても見応えがあってもっと味わいたかったのですが、まだまだ先は長いので後ろ髪を引かれつつ次へ。
ベルヴェデーレの中庭。庭を囲む回廊に彫刻群が展示されています。
ベルヴェデーレのアポロ。(英語版Wikipedia)
またお前かと思いましたが、こちらはナイル神ではなくアルノ川の神。違いはよくわかりません。
目玉作品の一つ、ラオコーンがありますね。
この作品こそがヴァチカン美術館の発端、起源なのです。このラオコーンと先ほどのアポロから始まり、どんどん建物が周囲に作られて今に至るわけですね。詳細は例によってWikipediaをどうぞ。
ギリシャ人とアマゾンの女人族の戦争を描いた石棺。中央にいるのがアキレスです。「戦場での敵対相手との恋」は遥か昔から人の胸を打つテーマだったんですねえ。
アフロディーテ。初めて等身大の女性のヌード像を作ったプラクシテレスの『クニドスのアフロディーテ』をモデルにした作品。
3体の像。先述したようにヴァチカンの彫刻はナポレオンによって多くが奪い去られたのですが、その際の展示スペースを埋めるために時の教皇が買い付けた作品。中央はアントニオ・カノーヴァの『ペルセウスとメドゥーサの首』。
続いてピオ・クレメンティーノ館へ。
ベルヴェデーレのトルソー。台座部分にサインが彫られてるのがわかりますか。ギリシャ文字で「ネストルの息子、アポロニオス」と書かれているのですが、この人物については今でも謎です。製造年代も研究によって違うみたいですが、いずれにしろこれは模刻ではなく本物のギリシャ彫刻であることは間違いないようです。ミケランジェロがこれを絶賛したのは有名な話。
彫像が並べられた円形の部屋。左から2番目はヘラクレスの金箔像。棍棒とライオンの皮を持っています。この像がポンペイにあったとき、雷に打たれて神聖不可侵のものとされて地下に埋められていたのを発掘したそうで。
聖ヘレナの石棺。皇帝コンスタンティヌスの母。描かれているのはローマ騎士団の凱旋です。
リーガの間。中央にあるのが戦車(リーガ)です。
続いてタペストリーの回廊です。
ブリュッセルでラファエロの弟子たちの下絵を基に作られたタペストリーを「スクォーラ・ヌォーヴァ(Scuola nuova)」と呼び、それらが展示されています。
続いて地図の回廊。16世紀後半に教皇の命により描かれたイタリア各地の地図が展示されています。
シチリア島。
カンパーニャ地方。
ヴェネツィア。やっぱりリド島はそれぐらい大きく感じますよね。
ソビエスキーの間。ソビエスキーとは17世紀のポーランド王ヤン3世のことで、当時オスマン帝国との戦いに勝利した記念のこの絵画が飾られている部屋。横9メートルの巨大作品です。
無原罪の間。教皇がマリアに認めた称号、無原罪(Immacolata)を布告するための部屋。
このとき時刻が16時。既に3時間以上見て回っていますが、ここからが本番です。