4月4日(メキシコ料理店)

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木曜日は朝からハードな1日、なんですがこの日は午後担当の先生が欠席して昼間が3時間ほど空いてしまいました。そのときに暇な僕ら1年生に僕の先生がフランスの厄介な大学制度について教えてくれたのですが、それはまた別の機会に説明しましょう。いずれ進路について話すときがあるでしょうから。

今更ですが「僕の先生」っていう言い方も紛らわしいですね。いろんな授業があっていろんな先生がいますから。僕の作曲の先生はバックトゥーザフューチャーのドクに雰囲気が似てるので、今後はドク先生と呼びましょうか。

 

その後ユンとお互いの進路について少し話し合って、「音楽なんて難儀な道を選んでしまったものだねえ」なんてお決まりのセリフを決めつつ、色々と将来のことに考えを巡らせていました。仮に日本に戻らず勉強を続けるとしても、パリを離れる可能性もそこそこある、という感じでしょうか、今のところ。

 

その後のドクの授業も無難に終わり(課題はなかなかの出来でした)、予定通りルイとメキシコ料理店へ行くことに。

僕『サマータイムに入ったね。日本だったら夏でも20時には暗くなるから、今まだこんな明るいなんて不思議な気分だよ。コロンビアもきっと同じ感じでしょ?』
ルイ「一年中ずっと同じだよ。18時ごろに暗くなるのはずっと変わらない。パリの夏至は過ごしたことある? 22時でもまだ明るいからね、最高だよ」
僕『それは待ちきれないなあ』

ほとんどの人がそうだと思いますが、僕は日が長いとテンションが本当に上がります。叶うなら夏は北半球で、冬は南半球で生活するのが夢です。まあ無理な話ですが。ともかくこの春分から夏至にかけての時期は年間でもっとも好きな時期ですね。夏至が過ぎると本当に悲しくなります

 

道中はマレ地区を歩いて行きました。おしゃれなエリアとして有名で、日本人は特に好きな人が多いんじゃないでしょうか。ここらへんに住めたら楽しいんでしょうけれど家賃は今の倍ぐらいは覚悟しないといけませんからね。いや僕の住んでるところも悪くないですよ、ほんとほんと。

 

 

 

そうしてやってきたのが Candelaria というお店。奥の方にバーがあって、お酒だけならそちらでいいんですが、手前のご飯も食べれる場所は結構狭くて着いたときは満席でした。ルイにどうするか訊かれたのですが、せっかくなので待つことに。20分くらいで席が空きました。

 

 

 

僕『はえー、いやタコス以外は全然わからないから、どれがオススメ?』
ルイ「そうだね、最初はビールでも飲みながらチップスとケサディーヤを頼もうか」

Wikipediaによるとチーズのサンドイッチみたいな感じですね。初めて見ましたねこういうのは。

 

 

 

僕『うん、おいしいね。付け合わせのソースもいい感じ』
ルイ「それはよかった。でもやっぱりスパイスを足さないとね」

テーブルにはミディアム、ホット、スーパーホットと書かれたチリソースが置かれていました。僕はインドカレーが大好物なくらいなので辛いのは好きなのですが、さすがにこういう店のスーパーホットは辛過ぎるんじゃないかと警戒していたところ、ルイはそれを大胆にかけて、

ルイ「うん、これぐらいならちょうどいいよ。了三もやってごらん」
僕『マジッスか… じゃあいきますよ』

恐る恐る口にすると、案外いけました。もちろん結構辛いのでドバドバかけたりしたら無理ですが、ちょっとふりかける分には悪くないです。

 

ルイ「メキシコ料理においてスパイスは魂なんだ。これはよくある話なんだけど、辛いのがすごく苦手な人っているからさ、そういう人がメキシコ料理店行って、注文するときに言うわけだ。「チリソースは一切入れないでください」って。そしたら厨房にいるシェフは「チリソースなし!? そんなのメキシカンじゃねえ!」って言って少しだけ入れて料理を作るんだ。それでその人が食べたら「辛い〜〜〜!」って叫ぶっていうね」
僕『あはは、いやー料理人の気持ちもわかるけどね』
ルイ「あとは、この店もそうだけど、メキシコ料理っていうのは「気取らない」ものなんだ。誰でも気軽に食べられるのが魅力なんだ。もちろん多くの店がガストロノミック(美食、高級系)なスタイルで挑戦しようとするんだけど、ごく一部以外はどれもうまくいってないね」

なるほど、これがメキシコ流のなのでしょうね。

 

酒も進んできて、メインの料理へと進みます。タコスでもよかったのですが、僕が食べたことないトスターダを選びました。トルティーヤ生地を揚げたやつの上にいろんな具材を乗せる料理のようです。今回はツナとビーフのをそれぞれ食べました。もちろんチリソースをかけるのも忘れません。

 

 

僕『これは! これはうまいわ。いや僕だけじゃなくて普通に日本人にウケると思うよ』
ルイ「ほんとに? それは嬉しいなあ」
僕『日本はフレンチやイタリアンは山ほどあるけど、メキシカンってほとんどないからね。これはビジネスチャンスだよ』
ルイ「いいね、将来二人で店を出そうか」
僕『日本酒の置いてあるメキシコ料理店みたいな?』
ルイ「それ最高だわー」

日本における肉を使ったファストフードはハンバーガーが圧倒的に強くて、そこにサンドイッチやケバブなんかが少し食い込んでる状況なんですかね。しかしこのツナを使ったファストフードっていうのは、他にあまりないんじゃないでしょうか。価格も抑えられるし、日本のツナは高品質ですし、食べやすさを工夫すると本当に商売になる可能性もある気がします。

 

写真に写ってる酒はフローズン・マルガリータです。これもメキシコ料理店ではよくあるカクテルのようです。ソルティードッグのスタイルで、グラスの縁に塩が塗ってあります。これは普通においしいです。ルイが店員さんにつくりかたを訊いてみると、

ルイ「テキーラとライムとアイスが基本で、あとは秘密なんだってさ。すごくシンプルだね。シンプルっていうのは大事だよ」
僕『それを言うならルイくん、日本酒は米と水だけだよ。なんというシンプルさ!』
ルイ「やっぱりそうなんだよ。シンプルな素材で複雑なテクニック、これが究極なんだ」
僕『音楽も同じだねえ』
ルイ「その通り!」

 

店員さんの一人がなんとルイと同じくコロンビア出身で、二人でスペイン語で話してて非常に盛り上がってました。見た目は全然違うんですけどね。ルイは僕からすると南米っぽい雰囲気が全然ないです。

 

僕『コロンビアのスペイン語って、スペインのそれとはやっぱり違うの?』
ルイ「そうだねえ、了三も知ってるかもしれないけど、スペイン語は大体4つに大きく分類されるんだ。(全然知りませんでした)コロンビアのスペイン語はすごく癖がなくて、ほとんど平坦な感じ。パリのフランス語みたいなものかな」
僕『はえー、そうなんだ』
ルイ「面白いのは、コロンビアではメキシコのスペイン語って、すごくおどけてるというか、ギャグっぽい響きなんだ。なぜかというと、アメリカからカートゥーンアニメが輸入されるときに、メキシコを経由してそのスペイン語が当てられるから、僕らは子供の頃から「メキシコのスペイン語はアニメの世界の言葉」として馴染んでるわけだ。だからシリアスな映画なんかでスペイン語の吹き替えになってると、雰囲気が台無しになっちゃうことが多いんだ」
僕『へー! それはすごく興味深いというか、勉強になるわー』

文化っていうのはこういう側面がありますよね。実に面白い話です。

 

話しているとBGMがサルサに変わりました。踊り出すお客さんもいます。

ルイ「サルサは僕らにとってすごく重要だ。コロンビアでは「サルサが踊れなければ彼女は作れない」とまで言われてる」
僕『そんなに! でも難しいんじゃないの? ルイはどうやって習ったの?』
ルイ「多くの人は家族から教わるんだと思う。僕の場合も母や姉が教えてくれた。もちろん、情熱的で複雑なリズムのサルサは難しいんだけど、みんなが一番馴染んでるサルサは誰でもすぐにできるようになるよ。今度教えるから、スペイン系の女の子を捕まえに行こう」
僕『ほんとにー?』

サルサが踊れるようになれるかはわかりませんが、僕は踊るのは好きですよ。小学生の頃に覚えた南中ソーランは今でもほぼ全て踊れるはずです。今度ルイに披露してやりましょうかね。

 

 

 

これまでの写真でちらちら写ってたおちょこのようなものはテキーラのショットです。ルイに飲みかたを教わりました。

ルイ「よく手の甲に塩を置いて、それを舐めて飲むっていうのがあるけど、あれはどちらかというと映画っぽいスタイルなんだよね。それでもいいんだけど、僕らが普段飲むやり方は、まずライムに塩を振って、それを口に含んでからテキーラを一気に含む。で、口の中で混ぜて味わったあとで飲み下す。この方が味わいがあっていいよ」

ルイはそのやり方でテキーラを一気に飲んだ後で投げキッスをしてきたので、僕も作法を真似て投げキッスをしてやりました。ルイは大変満足そうな顔で喜んでました。テキーラなんてこれまで2、3回しか飲んだことなかったので、なかなかハードでした。

 

ルイ「それじゃあ締めにミチェラーダを飲もうか」

 

 

 

僕『ちょ、この色はなに!? 何が入ってるの』
ルイ「ビールとライムのカクテルなんだけど、肉を焼いたソースが入ってる」
僕『はあ!? え、そんなのおいしいの?』
ルイ「それは了三が判断することさ」

多少引きつった顔で飲みます。

僕『あー、あーあーあー、なるほどねー。いや悪くないよ。まあとにかくこんなのは飲んだことがない。僕にとっては非常にエキゾチックだ』
ルイ「いいね、エキゾチック」

ちょっとこの味を説明するのは僕にはできませんね。ビールとライムと肉の味が確かに感じられるのですが、なんとも面白い混ざりかたをしていて独特な味になってます。ヴォエッってなる人も少なくないでしょうね。僕にとっては、すごく美味しいというものではありませんが、こういうのもありっていう感じです。

 

いやー、それにしてもずいぶん飲んでしまいました。最初にビールを飲んで、マルガリータを飲んで、これを飲んで、テキーラショットが合計5杯ですから、こんなに飲んだのは久しぶりです。会計も二人で100ユーロになってしまいました。これはしばらく節約極貧生活が続きそうですね… そりゃいつも通りだろ、ってね。

 

 

 

ルイ「どうだった?」
僕『いやー、とにかく飲んだね。本当に久しぶりだ。でもトスターダは本当に美味しかった』
ルイ「そりゃよかったよ。今度は日本酒だね」
僕『それなんだけど、多分パリである程度のクラスの日本酒を飲もうと思ったらかなりの値段になると思うんだよね。ご飯と合わせて70とか80ユーロ近くはいくと思う。だから、もし夏まで待てるなら、僕は8月に一度帰国する予定だから、そのときに良い日本酒をいくつか持ってくるよ。それを一緒に飲もうよ』
ルイ「ほんとに!? そりゃもう、そうしてくれるなら是非!」

 

まあちゃんと情報を調べたわけではないので、一応パリで日本酒が飲める店を探してみましょうかね。単体で飲んでももちろんおいしいんですが、やっぱり料理と合わせて飲みたいですよね。そうなると必然的に高くつくので、悩ましいところですね。

 

そんなこんなでメキシコ料理編でした。