半年ぶりのコンサート記事です。かつては週に1回以上の頻度で書いていたので非常に懐かしい感覚ですね。
パリでは今月初旬からオープニングコンサートなどが既に行われており、一応は無事にシーズンを開幕している状況です。とはいえ国外から来るオーケストラやアーティストのリサイタルなどは中止になっているものも多いです。僕も2週間前に久石譲のコンサートを予約していたのですがもちろん中止。すごく楽しみにしていたので非常に残念でした。
というわけで今回が今シーズン最初のコンサートです。9月27日、フィルハーモニー・ドゥ・パリで行われた、Les Sièclesのコンサートに行ってきました。
Les Siècles(レ・シエクル)は指揮者のFrançois-Xavier Rothが2003年に立ち上げたオーケストラで、近現代〜現代作品を主に演奏しています。彼は1年前の記事でも紹介したことがあります。おそらくパリでは度々演奏しているのでしょうけど、僕が聴くのは初めてです。
ホールの様子はこんな感じ。予約ページでは全席完売になっているにも関わらずこの客人数ですから、おそらく半分以下に座席を絞っているのでしょう。席に案内されるときは「買った席と同じ列ならどこでも自由に座ってOK、ただし連れの人以外とは間隔を空けるように」とのこと。まあどうせ僕は普段から割と好き勝手に席移動してるんですけどね。
Olga Neuwirth: «Clinamen / Nodus» (1999-2000)
最初は当ブログでも何度か登場しているオルガ・ノイヴィルトの作品。編成は弦楽器と打楽器のオーケストラに加え、チェレスタとエレキギター、それに謎の楽器の二人組がいました。持続音をふわーっと出すような感じだったのでシンセの一種かなと最初は思ったんですが、どうも電子楽器ではなさそうな感じでよくわかりません。それと最初の調弦のときにセカンドヴァイオリン群だけ4分の1音(半音のさらに半分)低く調弦していました。微分音を使うということですが、オケの調弦でこういうことをするのは初めて見ましたね。
全員でフォルテで騒音的に音を鳴らしながら始まり、やがて弱まっていって薄い音のアンサンブルに繋がる、基本的にはこの繰り返しです。ハーモニーの作り方なんかは面白い部分もあるのですが、たくさんある打楽器を一気に使う場面だと割と雑な印象というか、あんまり変わり映えしない音が続くのでそこらへんは退屈でした。微分音もそれほど効果的に活かされてる印象はなかったですね。4.5。
後部席を使って打楽器を立体配置していましたが、これはおそらく作曲者の指示ではなく、この後別の曲で後方中央の舞台を利用することになるので、プログラムの流れ的にそうしたのだと思われます。
ラヴェル: 『スペイン狂詩曲』『ラ・ヴァルス』
現代作品は最初のみで、ここからは全てラヴェル作品。2つとも素晴らしい演奏でした。ピッコロやクラリネットは特に良くて、コーラングレも色気のある演奏で魅力的でしたね。なによりオーケストラがかなり緻密で、指揮者の微妙なテンポの揺らぎにもしっかり付いてきてて崩れる瞬間は全くありませんでした。かなり慣れている印象を受けますね。ここらへんが単一指揮者オーケストラの強みということでしょうか。
ラヴェル: 『ボレロ』
最後の曲であり今回のメインです。今回のコンサートは副題が「ニジンスカに敬意を表して」となっているのですが、これは今ではフィギュアスケートのおかげで一般知名度もかなり高まったヴァーツラフ・ニジンスキーのことではなく、その妹のブロニスラヴァ・ニジンスカのことです。
今回ボレロに合わせて踊るのが表紙になっているコレオグラファーのドミニック・ブランで、プログラムに載っていた彼のインタビューによると「兄以上に多くの振り付けを後世に残しているにも関わらず、ほとんど光が当たることのないニジンスカを研究し、兄との違いや彼女自身の哲学を表現したい」とのこと。
このように後部席中央の舞台で彼が一人で踊る中、ボレロが演奏されました。足を強くふみ鳴らすとこの舞台が結構響くので、そういった音響を交えながらの振り付けは大胆な印象を受けましたが、現代舞踊にまったく精通していない僕としては「ふーん」という感想でした。まあもっとニジンスキー兄妹の文脈を理解すればまた違った見え方があったのでしょうけどね。
近くで見るとなかなか良い肉体をしています。さすがバレエダンサーですね。
演奏のクオリティは予想していたよりも高かったので、その点は満足しています。かなり久々のコンサートでしたが、やはり生演奏を目の前にして耳を澄ませるのは楽しいですね。今シーズンはこれまでに比べて聴きに行く回数はかなり減ると思いますが、なるべく多く機会を見つけようと思います。