ストラヴィンスキー: 火の鳥 他 -パリ管弦楽団 12/19@PdP [7.5]

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12月19日、フィルハーモニー・ドゥ・パリで行われた、パリ管弦楽団のコンサートに行ってきました。

19時半まで授業があって、20時半の開演まで果たして間に合うのか、というよりこのストライキの最中そもそもどうやってホールまで行くのかという話なんですが、パリを南北に走っているメトロの4番線が一部の駅だけで乗車可能だったので、運良くそれを使うことができました。それで北駅まで行き、そこからは歩いて40分ほどで着きます。

 

 

フィルハーモニーは市内の端っこにあるので徒歩だとやはり遠いです。ほぼ小走りくらいで急いで向かって開演時間ギリギリに到着したのですが、トラブルがあって開演時間が30分遅れることに。おい! もーせっかく急いで来たのに……

 

プログラム

 

1. ドビュッシー: 聖セバスティアンの殉教
2. ストラヴィンスキー: 火の鳥

 

今回の指揮者はヴァレリー・ゲルギエフです。日本人にとっては最も有名な現役指揮者の一人ではないでしょうか。ゲルギエフは札幌にも何度も来ていますし、PMF(北海道のクラシックのサマーフェス)でも振っていたことがあったので、僕にとっても非常に馴染みのある指揮者です。指揮棒を使わずに指先をプルプル震わせながら指揮するのが特徴です。髪がまだ十分残ってた頃は演奏途中で汗に濡れた髪をぐいっと拭う仕草も好きでしたね。

 

まず前半はドビュッシーの『聖セバスティアンの殉教』。作曲は1911年。前年にはピアノの前奏曲集第1巻を完成させており、ドビュッシーがいよいよ独自の境地にたどり着いた時期の、劇音楽作品です。オーケストラ、混声合唱と二人のソプラノ付き。今回はクラウディオ・アバドが2003年にルツェルン音楽祭で演奏した5楽章構成版をそのまま利用しています。

実はゲルギエフの劇音楽を聴くのはこれが初めてだったんですよね。これまで聴いてきたのはほとんどチャイコフスキーやショスタコーヴィチの交響曲ばかりでしたから。なので今回の第1楽章を聴いてちょっと驚いたのですが、彼は劇音楽の振り方をものすごく心得てますね。なんでこんな、舞台が目の前にありありと想像できるような音を作ることができるのか、解明は全然できないのですが、明らかに交響曲を振るようなやり方とは違います。こっちがゲルギエフの本質だったのかと、今更ながらに気がついたわけです。

 

 

そんな感じで最後まで飽きさせない演奏でした。二人のソリストもなかなか良かったです。この調子だと次のストラヴィンスキーが俄然楽しみになってきます。

 

休憩明けて、後半は『火の鳥』。作曲は1910年。過去の記事でも紹介したペトルーシュカ、春の祭典と並んでストラヴィンスキーの初期バレエ音楽3作品の一つです。僕自身、高校生の頃に参加したとある大学オーケストラでこれを演奏したことがあるので、スコアの細部まで覚えていますし好きな作品です。

まずは冒頭から、結構ゆっくりしたテンポです。僕の好みだともう少し早い方が好きなのですが、これがゲルギエフのスタイルなんですね。彼は勢いで誤魔化すということを一切せず、同時に鳴っている楽器や目立たない対旋律をかなり細かく拾い上げているので、このテンポがちょうど良いのでしょう。そして前半で感じたのと同様、劇音楽としての情感を見事に表現しています。本当になんなんでしょうね、魔法みたいです。メリハリのつけ方なのか、テンポの微妙な抑揚なのか、楽器のバランスの調整なのか。

 

まあここまで書けばさぞ素晴らしい演奏だったのだろう、と僕も期待していたのですが、実は大きな問題がありました。結局オーケストラの側が彼の指揮について来れてないと言いますか、つまりアンサンブルが迷子になる瞬間が結構ありました。ひどいときは弦と管が思いっきりズレたりする場面もあったので、これは良くなかったですね。察するに十分な練習とリハの時間がなかったのではないでしょうかね。彼のような独特な指揮はやはり専属劇場や常任指揮じゃないと十分にその効果を発揮できないのだと思います。

それでもホルンやクラリネット、ハープなど個人単位では素晴らしいセクションもありました。コンマスも素晴らしかったですね。一方でピッコロやフルート、トランペットなどはうーんという感じ。鍵盤打楽器も良くなかったですね。この曲の後半のファゴット(バスーン)は個人的にものすごい好きなのですが、それも後一歩足りないという感じでしたね。

 

 

結果としてのクオリティはさておいて、興味深い演奏であったのは間違いないです。ゲルギエフの真の魅力を発見できたのはとても大きな収穫でした。いや、これすらもまだ彼の本質ではないのかもしれませんが。機会があれば他のバレエ音楽や劇音楽も聴いてみたいですね。

 

さて帰りはいつもトラムなのですが、動いてるのかどうかもよくわからないので、シャトルバスを使うことにしました。

 

 

フィルハーモニーはいつもコンサート終了後にこのようにシャトルバスが待機していて、パリ市内の主要駅まで無料で送ってくれます。素晴らしいサービスですね。これでサンラザールまで行って、そこからバスがあればそれで帰ることにしましょう。

 

 

冒頭でも書いた通り30分遅れのスタートだったので、終演が23時、サンラザールに着く頃はもう0時を過ぎていました。人気のない駅でイルミネーションが輝いています。この後無事にバスが来て帰宅。普通にコンサートに行っただけなのに家に着いたらもう1時ってのは勘弁してほしいですね。