1月19日、INA-GRM(フランス国立視聴覚研究所・音楽研究グループ)のアクースモニウム(スピーカーオーケストラ)のコンサートに行ってきました。
アクースモニウムとは電子音楽作品の舞台上映のための装置のことで、会場の様々な場所に設置されたスピーカーをミキサーで操作しながら作品を「演奏」します。舞台には誰も登場せず、お客さんはひたすら音を聴くだけという非常にマニアックな催しです。
これは今日ではなく以前に同じ会場で撮ったものですが、概ねいつもこんな感じです。ステージだけではなく客席の中や会場の壁際にもスピーカーが設置されています。
今後もアクースモニウムのコンサートは沢山登場しますが、こんな雰囲気だと覚えておいてください。
さて本日は3夜連続コンサートの2日目です。昨日は別のコンサートへ行ってたので、1日目についてはわかりません。
全作品とも世界初演、2018年作曲、INA-GRMの委嘱です。順に感想を書いていきます。
1. Armando Balice (?) «Black Garden»
同時発音数が多い「厚い」傾向の作品。しかも持続音・断続音のシークエンスがダラダラと続くので、飽きる。音作りも迫力を出そうとするのはわかるが、あまり魅力的ではなかった。3.0。
2. Ingrid Drese (?) «Treize virgule huit»
こちらも厚めの曲だが、シンセシスをやや多く使っている。音作りは多少目を引く部分もあったが、やはりシークエンスがダルくて展開に乏しい。3.5。
3. Jérôme Noetinger (?) «Les objets inaudibles»
打って変わって同時発音が少ない「薄い」作品。発砲音やハンマー音など、暴力的な音が印象的。薄く音を紡いでいくところは悪くないが、背景音を使い出すと陳腐な響きになってしまって残念。4.0。
4. Loïse Bulot (1982-) «Zenith»
ほぼ全てシンセシスなのではないか? というくらい多用していた。音も音高のあるものばかりを使う、かなり「ハーモニック」な作品。それは一貫していて良いし効果的でもあったが、せっかくハーモニックな方針なのに色彩的魅力がやや欠けるのが残念。しかし構成面では今日の中では一番まともだった。5.0。
5. Robert Hampson (1965-) «Éclat»
序盤が面白かった。鐘の音にシンセシスや他の音を混ぜたりして面白い響きを作っていた。がそこまでで、後半部は全然展開していかずにダルいシークエンスが続いてしまった。しかもここで終わっておけば、と思ったら蛇足パートがあった。付け加えた意味が全然わからなかった。3.5。
プログラムにも書いてありますが、20分超の曲ばかりなんです。20分を構成するのは並大抵の工夫では済まされないのです。どうすれば飽きさせずに聴いてもらえるかということにもっともっと腐心しないと、雰囲気だけでは「構成」はできません。おそらく委嘱条件が20分前後だったから、皆時間稼ぎ的な手段に出たのではないかと疑ってます。僕としてはアクースモニウムの厳しさを知る、良い機会になりました。