2019年7月〜9月期のアニメシリーズの各作品第1話だけの評価です。今回は10作品を紹介します。
大きなネタバレみたいなものは避けてるので、まだ作品を見ていない方でも参考にして頂けると思います。
「名作アニメは第1話の時点で既に名作である」という持論があるので、この時点での評価がのちに急落することはあっても急騰することはないと思っています。もしあったらゴメンナサイします。
評価基準についてはこちらをご覧ください。MALはMyAnimeListの現時点のスコアと投票人数です。
ではいきましょー!
A+ 荒ぶる季節の乙女どもよ。 (MAL: 7.68/6.0k)
原作既読。有名な脚本家の岡田麿里が漫画の原作を担当していて、非常に面白い作品なので必ずアニメ化されるだろうと思っていました。アニメのシリーズ構成・脚本はもちろん岡田麿里が担当、監督はPA作品でおなじみの安藤真裕、制作は新興のLay-duce。
僕が今期一番楽しみにしている作品なのですが、期待以上に完成度の高かった第1話でした。キャラクターデザインは原作絵の魅力をほぼ理想的なぐらい引き出していますし、美術も雰囲気によく合っています。脚本・コンテも原作をうまく補完しながら組み立ててましたね。いやーしかしちょんまげのカットは殿様の絵とそれっぽいSEをつけて欲しかったですね。あれ海外でもウケると思うんですけどね。
そして音楽がいいんです。僕は今期の中では一番好きです。冒頭最初の曲も良いですし、その次の『アトリエシリーズ』風の軽い曲も素晴らしいし、合わせ方も完璧。Bパート冒頭の音楽も新菜のミステリアスな雰囲気にとても合っていて良い。その後の走れエロスからの音楽もすごく上手く合わせてますね。まあとにかく音楽に関しては文句のつけようもないくらい素晴らしいです。作曲は日向萌、国立の作曲科出身。まだ若いながら素晴らしい実力ですね、今後が楽しみです。
キャストは主役和紗が河野ひより、新人ですがすごく良いですね。大人しそうに見えて表情豊かな和紗にとても合っているし、戸惑ったり震えたりする声が上手です。これは見事なキャスティングですね。そして相手役の泉が土屋神葉、あの女優の土屋太鳳の弟さんです。2017年の『ボールルームへようこそ』でも主役をやっていましたが、今作もいいですね。まだ子供っぽさを残しながらも声変わりを迎えたようなちょうど良い声で、「内緒に」のところなんかも見事でした。
ラストのブルーハーツは、これは監督ではなく岡田さんのチョイスなんじゃないかという気がします。あの人がいかにもやりそうな感じで、現に見事にハマってて最高なんですが。「あ、入った」のところも原作をさらに昇華させてて完璧でした。
大変素晴らしい第1話でした。これはアニメを見慣れていない人にも是非勧めたい作品です。それと、この作品の翻訳はちょっと難しそうで非常に気になるところなので、それも特集をしようと思っています。
A+ Dr.STONE (MAL: 8.25/30k)
原作未読。『約束のネバーランド』『鬼滅の刃』に続くジャンプ原作のアニメ化。2017年初頭にジャンプで「新連載6連弾」という大企画があり、その第5弾目の作品。ちなみに前期アニメ化された『ぼくたちは勉強ができない』もその一つ。アニメ制作は前期から続いている『フルバ』のトムス・エンタテインメント制作8班。
素晴らしい第1話でした。畳み掛けるような展開を見事なコンテで描き、理想的な導入になっています。音楽の使い方もとても良かったですね。キャラクター造形や台詞回しは少年漫画らしさがありながら、しかし紋切り型にならないような工夫が見られてとても好印象です。題材も教育的かつ胸踊るような期待に満ちていて、原作漫画の企画が実に優れていることが窺えます。
キャスト陣もいいですね。主役の千空は小林裕介、天才タイプの生意気さと情熱を感じさせる声で、とても合っています。今期は後に紹介する『炎炎』や『ロード・エルメロイ』にも出演しています。相方の大樹が古川慎、『かぐや様』の御行役のような冴え渡るツッコミが期待できそうです。ヒロインの杠が市ノ瀬加那、前期も『フェアリーゴーン』のマーリヤや『キャロル&チューズデイ』のチューズデイなどの主役を担当していて、かなり売れてきている感じですね。本編でヒロインの出番がどれほどあるのかは知りませんが楽しみです。
今のところ、ここ最近のジャンプ原作アニメでは一番楽しみな仕上がりです。是非第1話はご覧あれ。
A ダンベル何キロ持てる? (MAL: 7.49/9.5k)
原作既読。まさかこの手の作品にAをつける日が来るとは。
これはもう企画の勝利としか言いようがないですね。これ以上ないくらいの理想的なアニメ化だと思います。
まずは主役ひびきを演じるファイルーズあい。よくぞ発掘したなという大型新人です。少年役もやれそうな魅力的な声というだけでなく、基本的な演技がとても上手い。本当に新人だとはにわかに信じがたいレベルです。この第1話で十分すぎるくらい彼女の実力が現れています。間違いなく今後売れていく声優でしょうね。
しかも彼女自身の趣味が本格的な筋トレという、この企画のために生まれてきたんじゃないかという奇跡的なキャスティング。なんと公式で彼女となかやまきんに君の筋トレ動画がアップされています。動画はこちら。一体どこに向かってるんだこのアニメは。
そしてなんと言っても素晴らしいOP。『かぐや様』以来のSクラスです。歌詞がとても良いしそれをのせる音楽もキャッチーで見事に合っています。歌うのはやはり主役のファイルーズあい、ラップ部分の歌い方がとても良いです。街雄(声:石川界人)の合いの手も素晴らしい。重機のとこだいすき。
安心・安定の動画工房制作が為せる業なのか、キャラクターデザインと作画もとても良いです。原作に比べてアニメ版はエロさよりも可愛らしさの方を際立たせて、エロ描写を抑えめにしていますが、この方針も見事な判断です。作中でも「エロで露骨に媚びてきた!」なんてセリフがありますが、アニメ版はむしろ健全なスタイルで制作していこうという意志を感じます。
当初は「流し見する程度の枠」だと思っていたら、まったくダークホースでした。第1話は是非見てもらいたいですね。
B+ ヴィンランド・サガ (MAL: 8.50/15k)
原作既読、とはいえ例のフランス語版の序盤を少し読んだだけです。幸村誠の原作漫画は2005年から連載しており、今も続いています。制作は『進撃の巨人』のウィットスタジオ。
原作とアニメ版の違いですが、原作は主人公トルフィンが成人してから始まってその後回想で子供時代を描くのに対し、アニメでは子供時代から始まって時系列で描いていく、のだと思われます。原作の第1話は掴みとしてとても印象的で、そのままアニメにしても良いと思うのですが、「主人公の物語」にするべく時系列で腰を据えて物語を描こうという態度なのでしょうか。それと、原作はちょっとしたギャグや吹き出し外のセリフなどで軽妙に描いているところを、アニメではほぼストレートにと言いますか、感情曲線をシリアスな方向からほとんど外さずに作っています。
3話同時公開なので第3話まで見ましたが、この企画の方針が最良だったのかは今のところなんとも言えません。高品質な作画と美術で村の生活などを丁寧に描くのはとても良いとは思うのですが、いくらなんでもどっしり構えすぎなんじゃないかなという気もします。すごく長いスパンでやるならそれも一案ですが、これは2クールで終わらせる予定らしいので、僕としてはもう少し各話の構成にメリハリが欲しいなと思ってしまいます。
とは言えアニメ自体の品質はやはり素晴らしいには違いありません。次の2、3話でどう展開するかを楽しみにしています。
B+ 彼方のアストラ (MAL: 7.63/7.2k)
原作未読。『SKET DANCE』で知られる篠原健太の漫画が原作で、既に連載は終了しています。「マンガ大賞」の2019年度大賞作品でもあり、とても期待値が高いです。制作はラルケ、監督は安藤正臣。
第1話は1時間の特別編。ギャグが結構独特なのでそこは人を選ぶと思いますが、脚本・コンテは良く出来ていたと思います。宇宙船の窓から彼方にいるアリエスを発見するときに、まず冷凍ミカンが手前から映りこんでいくカットが見事でしたね。それと、宇宙空間とそれ以外のシーンで画面比率を変えていますが、今のところはそれほどの効果を感じません。もしかしたら今後につながる何かの意図があるのかもしれませんが。
音楽も良かったです。二人の救助シーンや帰還のルート探索シーンなど、音楽の盛り上げ方が上手かったですね。そういえば救助シーンの一番後ろで妹ちゃんがザックを後ろから抱きついて支えてるところ、あれ好きです。
主人公カナタのキャストは今や大人気の細谷佳正、今作みたいな明るく張った声の演技は僕にとっては新鮮です。ボケもツッコミもやらなきゃいけないので大変そうですが、頑張ってもらいたいところ。あとはツンツンキャラのキトリーが『荒ぶる』にも出ている黒沢ともよ、役柄はぴったりだと思うので、彼女の魅力がうまく出せるようなディレクションを期待したいです。
これからどんどん予想外の展開が待ち受けてると思うので、楽しみにしています。
B+ ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 (MAL: 7.66/4.8k)
原作未読、ですがアニメ『Fate/Zero』と、『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』は見ています。2月にniconicoで公開された第0話も見ました。
第1話はZeroから本編に至るまでの前日譚といった感じでしたが、よく出来ていたと思います。ケイネスが殺された場面でセイバーを見せたり、「脳に蟲とか埋め込まれてないか?」というセリフなど、Zeroから見ている人をクスっとさせる心遣いがいいですね。「その恐怖と苦痛を余すとこなく教えてやる」もそうですね。
終盤の盛り上げ方も良かったです。左手を差し出して黒服からマントを受け取り、イスカンダルの回想へと繋ぐ流れは音楽の力も相まって引き込まれてしまいました。
音楽はZeroから引き続き梶浦由記。前期から続いている『鬼滅の刃』も担当しています。Zeroの音楽も大変素晴らしかったですが、今作でも既に良い感じです。ラストに出てくる時計塔のテーマはプロコフィエフのパロディっぽくて僕は好きですね。
制作はufotableではなくTROYCA。新興会社ですが果たしてクオリティを維持できるか。
B 炎炎ノ消防隊 (MAL: 8.04/21k)
原作未読。制作はジョジョシリーズで知られるdavid production。原作者大久保篤は、前作の『ソウルイーター』もアニメ化されていて、中村豊をはじめ優れたアニメーターによる作画で海外でも人気の一作です。
OPも本編も素晴らしいクオリティの作画・美術で音響も良い感じなのですが、全体的に間延びした演出がもったいないですね。サブタイトルの出し方とOPの入りもやけに独特でした。
今後も戦闘でかつ炎の場面が続くとなるとクオリティの維持が心配になりますが、頑張ってもらいたいところ。世界観設定などは面白そうなので楽しみにしています。
B コップクラフト (MAL: 7.45/4.6k)
原作未読。『フルメタル・パニック!』シリーズで知られる賀東招二とイラストレーター村田蓮爾のコンビによる小説のアニメ化。制作は『てーきゅう』シリーズのミルパンセ。
元軍人の刑事と異世界少女騎士のバディもの。「アメリカのテレビシリーズ風」と銘打たれているだけあって、逮捕前のアレとかセリフ回しの一部にはそういう雰囲気がありますが、世界観やキャラクター設定は割と日本風だと思いますね。
物語の導入として悪くない第1話だったと思います。女の子のキャラクターデザインも村田蓮爾らしさがよく出ています。オーイシマサヨシのOPも良かったですね。
ヒロイン役は吉岡茉祐、僕は初めて知った声優さんですが、ここ最近の新人のレベルの高さからすると少し惜しい感じですね。まあ架空言語を喋ったりしなきゃいけないし、楽なキャラクターではないとは思いますけどね。
以下は余談なので無視していただいて構いませんが、僕は「架空言語を喋らせる作品」があまり好きじゃありません。主な理由は二つ、音素や発音が結局日本語と同じになってしまい、異言語感がなくなってしまうのと、キャラクター性にまつわる習慣や癖みたいなものが存在しないので、感情表現が不器用になってしまうからです。
例えば、反抗期の女の子が「だから何度も言ってんじゃん!」と怒った調子で喋るとき、いくつかパターンはあっても太字のところが一番声が高くなりやすいでしょう。これがキャラクター性にまつわる日本語発声の習慣・癖で、声優にとってこういう情報はものすごく重要なのです。そのヒントなしで演技を組み立てろと言われれば、結果として出てくるのは浅い次元の演技にしかならないのです。声優に英語を喋らせたときに不恰好になりがちなのも、発音の問題も確かにありますがそれ以上に英語の発話習慣を知らない(かつ誰も指摘できない)というのが大きいと思います。実はこれ「現代音楽における楽譜の問題」と全く同じなのですが、さすがに話題が飛びすぎるので割愛。機会があれば記事にしましょう。
さて、これが『アルトネリコ』シリーズの歌曲みたいな、歌としてだったら気にならないんですが、喋るとなるとやはり難しくて不恰好になってしまいます。こういった問題を解決しようとした作品には未だにお目にかかったことがありません。
お手軽な解決法としては、特定の外国語にかなり寄せた設定にして、その話者に喋らせるのが楽でしょう。ただし今回は原作で既に言語の設定を作ってしまっているので、そういった解決策は使えません。小説としてなら面白い言語の設定(例えば今作ならP音の発音が出来ないとか)でも、いざ喋らせたときにそれが活きるかは別問題なので、そういったところは僕にとっては残念です。
C かつて神だった獣たちへ (MAL: 7.10/6.4k)
原作未読。アニメ制作は前期『どろろ』『さらざんまい』のMAPPA、監督は宍戸淳。
これは難しいですね。第1話はOPカット、EDもテロップだけ出して歌の後ろで本編を続けるというくらいギチギチに詰めているのですが、確かにそうしないとこの導入部を終わらせることが出来ないので仕方ないかなと思います。実際ある意味教科書通りと言いますか、似てると噂の『フェアリーゴーン 』に比べて導入としてちゃんとやるべきことをやってるのですが、とにかく話を進めないといけないのでコンテの起伏がほとんどなく、また内容もそこまでオリジナリティーがあるわけでもない上に予想される展開をそのままなぞってる感じなので、テンポは良くても期待感が伴わない、そんな仕上がりでした。
多分、あの自害するシーンと、その後の「自分たちでケジメをつける」と宣言するシーン、この二つをもうちょっと感情曲線を膨らませながら作れたら良かったのかなと思うんですが、でも尺をこれ以上使えないとなると厳しいので、今のところ僕には理想的な解決法が浮かびません。音楽も少し安っぽいなとは思うんですが、音楽だけで果たして問題が解消されるかと言えば、それもどうか。
MALスコアも芳しくないですし、あまり良いスタートを切れなかったのは確かですが、MAPPAの制作力を信じてもう少し見守ってみましょう。
C グランベルム (MAL: 6.23/2.7k)
Nexus制作のオリジナルアニメ。監督は『Re:ゼロから始める異世界生活』の渡邊政治、シリーズ構成はおなじみ花田十輝。
SDガンダム風の低頭身ロボ×流行りの魔法少女バトルロワイヤルもの。案外脚本やバトルシーンのコンテや音楽の合わせ方なんかは良いんですが、いかんせん企画そのものがいかにもスベりそうな匂いがプンプンしています。ゲームシナリオだったら悪くないんですけどね。
主役キャストは満月が島袋美由利、前期から続いている『キャロル&チューズデイ』でもキャロル役をやっています。もう一人の主役新月は種崎敦美、クールキャラをどう演じていくのか楽しみですね。他にも日笠陽子や悠木碧など、有名どころが多くキャスティングされています。
こんな感じで楽しみは色々あるんですが本当に企画だけが気がかりです。果たして最後まで追いきれるのか。
以上! 10作品の紹介でした。
第1話時点でB以上がこんなに多いのはかなり珍しいと思います。個人的には豊作ということなんでしょうかね。まあでも確かに上位3つは失速することなく最後まで完走してくれそうな予感はしてます。
前期からの続きは『YU-NO』『フルバ』と、『鬼滅の刃』の方は相変わらずの調子なのでそのうち中断するかもしれません。
これまで同様、また1ヶ月後くらいに途中経過をあげます。
いつものことですが、ご意見は大歓迎です。「お前は全然わかってねーな!」というお叱りをお待ちしています。もちろん挙げた以外に面白い作品があればそれも教えてください。