お金が入ってこないのに宣伝するコーナー第2弾です。
漫画家の山田玲司が毎週配信している「山田玲司のヤングサンデー」という番組があります。これは彼が友人たちとサブカルを中心とした様々なテーマについて語り合うというものなのですが、やはり本業が漫画家なだけあって、漫画特集の回は特に面白い内容になっています。
そしてトークテーマにちなんだゲストを呼ぶこともあるのですが、2018年4月の「少女漫画クロニクル」の回でゲストに呼ばれたのは漫画家のきたがわ翔でした。彼は山田玲司がデビューした頃からの盟友で、その話ぶりからも二人の関係性の深さが窺えます。きたがわ翔はなんと中学生で早くも少女漫画家としてデビューしながら、高校時代はラグビーをやっていたという空前絶後の異色な作家です。山田玲司に「70、80年代の少女漫画を語らせたら日本一」と言わしめるほど、すさまじい見識を持っている人でもあります。
で、この少女漫画クロニクルの回が面白くて反響が大きかったので、ちゃんと個別の作家に焦点を当ててじっくり解説をしようということで、普段の番組配信とは別枠のような形で二人が主役の番組企画が始まりました。それが『れいとしょう』です。二人の名前からとられた、良いタイトルをつけましたね。これがとてつもなく面白いんです。
やはり漫画の分析なら実際の作品を見せながら解説したいですよね。ところが著作権の都合でそれをするわけにはいかない。じゃあどうするか。なんときたがわ翔が解説したい部分をそのまま模写するという力業をやってのけているのです。しかもそのクオリティがとんでもない。
これはそれぞれの回の無料部分からスクショした画像ですが、これ全部彼が一人でスケッチブックに描いてるんですよ。信じられますか。ここまでの模写の技術力を持っている漫画家なんて彼以外にいるんでしょうかね。
この素晴らしい模写だけでも十分に価値があるのですが、その解説というのが更にすごいんですよ。漫画家の目線からでないと気づかないような技術的なことから、当時の時代背景、作家の人生、漫画の潮流などを全て洗い出して作品の魅力に迫っていく分析は見事という他ありません。僕が特に驚かされたのは「鬼滅の刃から見える矢沢あいの影響」なんですが、きたがわ翔以外にそんな斬新かつ鋭い分析を一体誰が行えるというんでしょうか。その説得力には脱帽しました。
そして番組を成立させる上では山田玲司の存在も非常に重要なんです。きたがわ翔は一人語りでベラベラと喋り倒すような人柄ではない(と見受けられる)ので、そこで山田玲司が最高の聞き手を務めてくれるわけです。長年の盟友という間柄だからこそ織り成せるテンポの良い掛け合いが、分析の熱量をどんどん上げていき、とてつもない深みにまで達するわけです。これは以前紹介した有プロのときと同じですね。トークが輝くかどうかは聞き手にかかっているのです。
『れいとしょう』は他のヤンサンの配信番組と同様、前半の無料部分と後半の有料部分に分かれているのですが、僕は今回の帰国後自主隔離期間を使って一気に見ようと思って、有料会員になってこれまでの全部の回を見直したのですが、メチャクチャ面白かったです。月額500円で全て見放題になるので、月初に登録して月末までに全部見るのもありでしょう。500円の価値どころかその10倍払っても全然惜しくないほどの内容です。漫画に多少なりとも興味のある人は絶対に一度は見るべきでしょう。これ以上に面白い漫画分析なんてこの世にはないと、僕は断言できます。
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どの回もオススメではありますが、第7回スラムダンクや第2回萩尾望都あたりは手始めに見るには良いかもしれません。でもやはり第1回マカロニほうれん荘は二人の漫画家としての原点を語る非常に熱い回なので、作品を知らない方にも是非とも見てもらいたいですね。