6月23日(初めての寿司屋と日本酒の会)

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前々からルイと話していた「日本酒の会」を実現する日がやってきました。

最近はかなり暖かくなってきたので(暑すぎるくらいなのですが)、最初は外で飲もうかと話していました。しかし酒と一緒に何を食べたらいいかという話になって、日本食をどこかで調達するのもなかなか難しいなと思ったんです。一応持ち帰りできる寿司屋をいくつか見つけたのでそれにしようかと思ったんですが、「それならいっそ寿司屋で食べた方がいいんじゃね」と思って、安上がりな寿司屋を探したのです。

そしたらスシビュッフェ(Sushi Buffet)という食べ放題の店を発見したのでルイに教えたら、「食べ放題! 最高だね!」と喜んでいたのでそこに行くことにしました。値段は夜で18ユーロなのでかなり安いです。もちろんクオリティはお察しなんですが、まあ初めての寿司屋だしクオリティを確かめてみたかったのもあるのでよしとしましょう。

 

バスティーユの駅で待ち合わせてお店へ。オペラ劇場から歩いて5分ちょいで着きました。

僕『今日は食べ放題だから朝から何も食べてないよ。もう腹ペコさ』
ルイ「同じ同じ。笑 楽しみだねー!」

 

 

 

メニューは先ほどのリンク先からも見られます。寿司以外にも焼き鳥やら天ぷらやらもあります。

ルイ「寿司と焼き鳥を同時に食べるのはよくあることなの?」
僕『まあ普通はあり得ない。けど別に悪い組み合わせというわけではないし、今日は特別な日だから問題ないよ』

メニューと一緒に紙とペンを渡されるので、それに番号を書いて注文します。ビールの一覧の中にアサヒキリンがあったのでそれぞれ注文してみました。

『じゃあカンパーイ』
カンパァイ!
『うわー日本の味だなあ! 久しぶりだねこの感じ』
「笑 そうなんだ。ちょっとした帰省気分だね」
『まあこの前帰ったばっかりだけどね。ルイはどう?』
「とても美味しいよ! 軽めだけど風味があるね」
『僕にとっては慣れた味だからね、外国の人がどう感じるかは少し不安だよ』
「自分はとても気に入ったよ。了三は何が一番好きなの?」
『そりゃあ僕の街の名前でもあるサッポロだよ。でもパリでは珍しいだろうね』
「そうなんだ。是非飲んでみたいなあ」

まあ正直言ってそれほど違いはわかりません。特に缶ビールは滅多に飲まないので利きビールとか絶対できませんね。でもどれも美味しいと思ってますよ。

 

味噌汁もあったので注文してみたらレンゲと一緒にでてきました。まあそうでしょうね。

『レンゲは日本ではほとんどラーメン専用って感じだね。普通はお箸で食べるよ。左手でお椀を持って、こうやって直接汁を飲むんだ。でも食べづらかったらレンゲ使いな』
「いやいや、日本の作法を学ぶためにここにいるんだ。だから全部教えてくれ」

なかなかプレッシャーのかかることを言ってくれます。味噌汁の味は思ったより悪くなかったですが、これなら僕が作る方が美味しいでしょうね。(ドヤ顔ヒゲボウズ) 今度ルイに披露できるように勘を取り戻しておきましょう。

 

その後お待ちかねの寿司と焼き鳥が来たのですが、お腹が減りすぎて写真を撮るのを完全に忘れていました。いやー申し訳ないッス。まあ気になる方はトリップアドバイザーあたりで検索するといろんな写真が出てくると思うのでどうぞ。

まずは寿司の食べ方の説明から。

『お箸を使って食べてもいいんだけど、今日はせっかくだから手で食べようか。そのまま掴んで、魚の方に醤油を少しつけて、その向きのまま口に入れる。こんな感じ』
「うん、いいね。おいしいよ」

握りのネタはマグロとサーモンとエビだけです。どれも「思っていたよりは悪くない」という感じです。特にシャリの質がもっと低いんじゃないかと思ってましたが、この価格帯なら十分だと思います。一方でエビ天は完全に天ぷらの紛い物でしたね。そもそも小エビだし、ただ揚げてあるだけみたいな感じです。

『まあわかってはいたけどね。エビ天は日本だとちょっとした高級品なんだ。例えばうどんとかにエビ天をつけると、お店によっては400円とか500円とか追加になるんだよ。だから食べ放題でまともなエビ天が出てくるわけないんだよね。まあ本物の天ぷらは少しお預けだね。これが本物だと思わないように
「あはは、わかったよ。これはこれで美味しいけどね」

 

巻きもあまり種類はありません。軍艦は夜限定でイクラがあるのでそれも食べてみました。

『んー、ちょっとイマイチかな。北海道はねー、イクラが本当に美味しいんだよ。是非ルイに食べさせたい。ちなみにイクラはロシア語なんだよ。多分ロシアから伝わったんだろうね』
「へー、そうなんだ。北海道は海が接しているもんね。オホーツクだっけ」
『そうそう。よく知ってるね』

うちの実家では毎年大晦日に市場でイクラを買ってるんです。大晦日は売れ残ってるのを処分するので安くなってるのが狙い目なんです。イクラは開封しなければすぐに鮮度が落ちるようなものではないので、ちょうどいいわけですね。これが僕にとっての年に一度のお楽しみなんですよねえ。それぐらいイクラは好きです。もちろん今年も来年も食べられないので残念です。

 

焼き鳥もまあまあです。もちろん炭火なんて使ってるわけないので日本の居酒屋のようなものでは全然ありませんが。せっかくなのでカリフォルニアロール各種も注文してみました。

『さてアメリカの時間だ。どれから食べようか』
「これ、このチーズとサーモンのやつをコロンビアではカリフォルニアロールって呼んでるんだよ。地元では結構人気があるね」
『へえ、日本だと全部カリフォルニアロールだから。これもこれも。こういう見た目のは寿司だと思ってないから、全部同じに見えるんだよ』
「わかるわかる」
『ああ、このラスベガスってのは悪くないね。この中だったらこれが一番好きかな。Las Vegas is the best!!』
Las Vegas is the best!!

 

最後にデザート寿司という珍妙なものがあったのでそれを二人で挑戦することに。チョコを塗った米にバナナとココナッツが入ってるものです。米が無ければ良い組み合わせなのになぜ邪魔をするのか

「どう?」
『そっちが先に言いなさい』
「んん……これは表現が難しいね」
同感だよ。まあ決してよいマリアージュではないね』
同感だよ

 

そんな感じで食べ終わりました。総評としてはそうですねえ、案の定エセ寿司屋だったんですが、食べ放題だったら選択肢の一つかもしれませんね、特に若い人は。夜限定のエビ天やイクラがさほどのクオリティでもなかったので、それなら13ユーロのランチにした方がいいでしょう。その値段だったら全然悪くないと思います。

今回の調査で他に安くて良さそうな寿司屋を発見したので、次はそこに行ってみたいと思います。

 

実はここに来る前にスポーツバーでサッカーのコロンビア戦があるのを宣伝していたので、ルイが興奮していました。なので少し寄って試合の前半戦だけ見ることにしました。

 

 

ルイが少し見切れています。

 

 

これはコパ・アメリカ予選のコロンビア・ベネズエラ戦ですね。ちょうどコロンビアが1点決める場面が見れました。

『歴史的に見て、今のコロンビアはどんな感じなの? 強い?』
「かなり強いと思う。例えばアルゼンチンなんかは常に強くて全然勝てなかったんだけど、この前も勝ったりしたからね。昔はどうも監督を国内の人にするってこだわりが強かったみたいなんだけど、最近はブラジルとかから呼んだりして、それが上手く行ってる感じだね」

僕はそれほどのサッカー熱はありませんが、去年のワールドカップは妙にいろんな試合を見た記憶がありますね。日本も含め、面白い試合が多かった気がします。日本・コロンビア戦をルイと一緒に見れたらよかったですね。さぞ盛り上がったでしょう。

 

22時頃になって、どこで日本酒を飲もうか考えた挙句、ルイの家にお邪魔することになりました。まあルイが了承してくれるならありがたいことです。

ルイの家は南部の落ち着いた地区で良い雰囲気でした。ちょっと前に別れたルイの元カノのおばあちゃんが持ってる大きめな部屋で、何人かとルームシェアしているようです。なんかそういう、別れた後でも昔付き合ってた人の親類と関わりがあるのって結構好きですよ。まあ中にはメンドくさいことになるケースもあるでしょうけど。ルイの場合は彼女の親御さんやおばあちゃんと今でも仲が良いみたいです。

キッチンスペースをお借りして飲むことにしました。ルイのためのお猪口もちゃんと持ってきています。お酒は夕張にある小林酒造の『冬花火』です。吟風の精米50%、日本酒度+2、純米大吟醸。

 

 

 

『これはおちょこっていう、日本酒専用のグラスだよ。京都の西にある備前っていう陶器で有名な地域があって、そこで買ったものなんだ。日本酒を飲むときは器もとても大事だ。ワインのようにね』
「おお、とても美しいね。でもいいのかい、僕が使って」
『もちろん。そのためにわざわざ日本から持ってきたんだから。で本題の酒だけど、今回はまず北海道のお酒を持ってきたよ。名前は冬の花火っていう意味だ』
「あーなんかドビュッシーの曲名でありそうな感じだね」
『確かに!笑 言われればその通りだ。細かい説明は後にして、まずは飲んでみようか』
「これは一気に飲んだ方がいいの?」
絶対だめだよ! 日本酒は味わって飲むものだ。口に含んでよく香りを味わってごらん。じゃあ乾杯』
「カンパイ! ……ああ、すごい、複雑な味が広がるんだね。素晴らしいよ」
『うん、いいね。すっきりしてて飲みやすい』
「これでアルコール15〜16%なんでしょ? 信じられない、そんなに強く感じられないよ」
『だから多くの日本人は調子に乗ってついつい飲みすぎてしまうんだよ』

これは美味しかったですね。やはり吟醸だったらすっきりした味わいが魅力なので、爽やかさがありつつ味わいも豊かです。本音を言えばもっと洗練された味わいの方が好きですが、北海道の酒米がここまできたかというだけで僕は心底感動しています。

 

『お酒を買うときにまず確認するのが酒米の種類精米歩合。酒米は普通のお米よりも粒が大きいんだ。なぜならお酒を作るときに削らないといけないからね。その削り具合がこの精米歩合。例えば70%って書いてあったら、お米の30%を削って残りの70%で作っているということ。今回の酒だったら半分削ってるっていうことだね。基本的には精米歩合が高いほど、つまり書かれてる数字が低いほど、雑味がなくなって味が洗練されていって美味しくなる。最高で、まあ35%かな。60%以下のものを吟醸って呼んで、50%以下を特に大吟醸って呼んでる。

お米は本来温暖な地域で育てられるものだから、北海道はそもそも米づくりには適してないんだ。だけど品種改良を進めていって、冷涼な地域でも美味しいお米が作れるようになった。今だったら全国レベルに匹敵するぐらいのお米があるんだよ。ところが、さっき説明した酒米は難しかった。粒が大きいからただでさえ倒れやすいのに、北海道は風が強いからね。気候条件に合って、しかも酒に適しているというのは難しかったんだけど、それも研究が進んでいって、ついに吟風という酒米が誕生したのが2000年前後だったと思う。だからまだまだ歴史は浅いんだけど、地元のお酒だから紹介したかったんだ』

 

当然ですが、これを説明するためにめっちゃフランス語の予習をしてます。僕の現在のレベルでは準備なしでこれを説明できるわけがありません。まあ今回に限らず、誰かに何か説明しようと思ったときには大体いつも予習しないといけないんですけどね。

酒については、日本にいたときから貧乏暮らしだったので普段から飲んだりしていたわけではありませんが、大学時代、「自由課題調査」の単位の自由課題にかこつけて酒蔵見学に行く程度には日本酒が好きです。お忙しい杜氏さんに厚かましくもインタビューさせて頂いて、貴重な経験でした。ちなみにこのときに酒蔵で飲む生酒の魅力にすっかり取り憑かれてしまいました。

 

その後はいろんな話をしました。僕の家族仲があまりよろしくない話や、日本での自殺率の高さの話、ルイは日本の女の子を狙うべきだという話、そして今度アニメ鑑賞会をやろうという話など。いやー外国の人とアニメ鑑賞会なんて、人生の夢の一つですね。必ず実現させましょう。

 

4時頃まで話して、その後深夜バスで帰りました。朝までいたかったのですが、迷惑にもなるし、翌日ピクニックもあるので無理せず帰ることにしました。楽しいひとときでした。