11月28日(フェラーリの怪しげな夜)

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早いものでもう12月になってしまいましたね。

11月の下旬からヨーロッパ各地でクリスマスの催しが始まります。これは学校近くのシャトレの地下街ですが、パリもあちこちでこういった装飾やイルミネーションが増えてきました。実はエストニアのケン坊とクリスマスにドイツ旅行でもしようかと一月前くらいに計画を立てていたのですが、結局お互いの予定が微妙に噛み合わなくて見送ることにしたのです。いやー結構色々調べたんですけどね。もし行けたら僕はアンナベルク=ブッフホルツの炭鉱夫パレードを見る予定だったのですが、まあ来年以降のお楽しみにしておきましょう。頑張って生き延びないといけませんね。

 

さて。木曜日に学校へ行ったときに、教室の前でルイを発見。このとき僕は授業に遅刻していたのですぐ教室に入らないといけないのですが、それはそれとして少し話しました。

ルイ「今日アルがコンサートへ行くって言ってるけど、了三はどうする?」
僕『コンサート? 何の?』
リュック・フェラーリのピアノ曲のコンサートだってさ。詳しくは僕も知らないけど、フェラーリの奥さんが主催するやつみたいだよ」
『へえ、ルイはどうするの?』
「んー行きたいのは山々だけど、今姉がパリに来てるから、帰ってから一緒に夕食を食べて……まあそのあと行けたらいいけど、多分難しいかな。イェジンは行くって言ってたよ」
『ああ、お姉さん来てるって言ってたもんね。んーまあ特に予定ないし行こうかな』
「わかった。そしたらアルに場所とか連絡するように言っておくよ」

 

その後授業が終わってイェジンと一緒に移動。場所はモントルイユ、パリ東部郊外ですがメトロで行けます。ロベスピエール駅で降りて少し歩くと、会場のInstants Chavirésに着きました。

 

 

裏道の人気が全然ない場所で、自分たち以外に誰もいなかったのですが、開演時間になってから少しずつ人が来始めました。これがパリ流、もう慣れました。その後にようやく開場。

 

 

一般的なライブハウスよりも小さい感じで、BARスペースと客席が40席あるかないかぐらいの広さです。そんな小さなコンサートにも関わらず、僕以外に日本人が4、5人いたのが驚きです。話しかけはしなかったのですが、聞き耳を立てていた限りだと音楽関連の雑誌編集の仕事をしている人たちのようです。電子音楽分野でもフェラーリだけはなぜか日本で人気が高いんですよね。かく言う僕も、パリに来るまではフェラーリ以外の作曲家をほとんど知らなかったくらいですから。

 

 

 

会場が暗かったのでうまく撮れませんでしたが、一応プログラムです。アルいわく後半の作品が超傑作とのことで、楽しみにしておきましょう。結局ルイは来ずにコンサートが始まりました。

ピアニストはMichel Maurer、今プロフィールを調べてみると、現代音楽を中心に活動している人で、フェラーリのピアノ曲のCDを複数録音している、まさに専門家ですね。

 

前半は『日記の断片』(Fragments du journal intime)、1982年の作品。彼の器楽作品は「晦渋」というものとはかけ離れているので、これもご多分に漏れず愉快な作品でした。エネルギッシュな演奏の方が僕は好きですが、ピアニストは小慣れた手つきと言いましょうか、余裕のある感じで弾いていました。

 

 

後半がお目当ての作品、『36連の小品集』(Collection de petites Pièces ou 36 Enfilades)です。これはピアノとレコーダーのための作品で、非常にわかりやすいミクストミュージックの例と言えるでしょう。同じピアニストの映像をvimeoで発見したので紹介します。気楽に聴ける作品なので一度見てみては。

 

 

今回の演奏も同じように古い磁気テープレコーダーを使って、同じ楽譜で地面にポイポイ捨てていく感じで演奏していました。

この作品をどう評価するのかは人によって大きく分かれそうなところですが、僕は面白いと思います。テープを使った極小の断片集というコンセプトと音楽的内容がちゃんとハマっている点は素晴らしいと思います。構成も良いですし。それになにより、ミクストミュージックそのものを小馬鹿にしている感じ、つまり「録音素材とシンクロしながら演奏することの諧謔性」というのを十分承知の上で、それをコンセプトにしているのが一番面白いと思います。まあ作曲者がそんなことを考えていたのかはわかりませんけどね。

ただ今回の演奏ではスピーカーの音がやや大きすぎてバランスが悪かったのがもったいなかったですね。その点を除けば、この作品を生で聴く機会はそうそうあるものではないですから、貴重な体験ができました。

 

 

 

コンサートが終わったあとで会場近くのケバブ屋へ、イェジンとアルとアルのお友達と4人で行きました。アルのお友達というのが吹き替えの収録スタジオで働いている人で、「ドラゴンボール超」のフランス語版も彼のスタジオで収録されたとのこと。いやーそれは是非とも現場を見学してみたいですねえ。あとはその流れでフランスのテレビドラマの話なんかで盛り上がりました。«Plus belle la vie»(美しい人生を!)というドラマは平日毎日30分枠で放映しているシリーズで、なんと2004年から今もなお続いているという。日本におけるサザエさん的な存在ってことなんでしょうかね。まあでもサザエさんは毎日放送しているわけじゃないから、やっぱり朝ドラが同じシリーズでずっと続いているって感じなのでしょう。

 

その後帰宅する頃には日付が変わっていましたが、夜はかなり冷えてきました。来週はいよいよ最低気温が氷点下になるとのことで、これから3ヶ月は寒さとの戦いです。去年は本格的な風邪こそ引かなかったものの鼻水が止まらないことが何度かあったので、気をつけないといけませんね。まあ暖房なしで何をどう気をつければいいんだって話なんですけどね。