6月7日、シテ・ドゥ・ラ・ミュージックで行われた、ラジオ・フランス・フィルのコンサートに行ってきました。
毎年IRCAMは6月の1ヶ月間に音楽祭を主催しており、このコンサートもその中の一つです。(ManiFeste 2019)
1. Iannis Xenakis (1922-2001) «Nomos Alpha» (1965)
クセナキスはギリシャ系フランス人の作曲家、でありながら数学・建築の専門家でもあり、その独特の出自を活かしたアプローチで作曲を行い、現代音楽史において最も重要な一人として名を刻んでいます。戦争の負傷で左目を失ったため、彼の写真は顔半分のものが多いです。
僕個人としてはあまり好きになれない作曲家です。さすがに生演奏で聴く機会は日本ではほとんどありませんでしたから、もっぱらCDなどで色々聴いてきたわけですが、これは面白いと思った作品は今のところ一つもありません。まあ彼の思想や具体的な手法、音楽史的な文脈について深く検討したことはありませんから、今後聴き方が変わって再評価するときが来るかもしれませんが、今のところはピンとこない感じです。
これは中期のチェロ独奏曲。現代の目線からすると斬新さはないし、それ以外の魅力も感じない。彼の作曲のスタイルと独奏という形式は相性が悪いと思う。
2. Franck Bedrossian (1971-) «Twist» (2016)(国内初演)
コンサートの表題にもなっているオーケストラ作品。作曲者はフランス人で、高等音楽院で学んだ後にIRCAM研究生となった、王道のキャリアを歩む。グリゼーやラッヘンマンにも学んだそうです。
作品はIRCAM委嘱で初演はドナウエッシンゲン音楽祭。基本的なオケ楽器に加え、プリペアードピアノ、シンセサイザー、エレキギター、アコーディオンがある。IRCAMのライブエレクトロニクス作品では恒例の、指揮者が片耳にイヤホンをして(おそらくクリック音を聞きながら)指揮を振るやり方。
まずそもそもスピーカーとの調整が良く無かったと思います。音量もそうだし音色もかなり浮いているので、電子音が登場するたびそちらに気を取られがちになります。さらに作品全体も割と騒音系なのでなおさらカオスな状態。弦楽器が細かいことをやっていても電子音にほとんどかき消されているのは、調整不足なのか作曲段階で問題があるのか。いずれにしろ音としても構成としてもそれほどの面白みはありませんでした。
3. Edgard Varèse (1883-1965) «Poème électronique» (1958)
前回のコンサート記事でもちらっと触れた、ヴァレーズの電子作品。これは1958年のブリュッセル万博の際に、コルビュジエとクセナキスが設計したフィリップス館で初演されました。電子音楽史における記念碑作品ともいえるでしょう。現在普通のスピーカーで聴いてもそれほど面白い作品ではありませんが、これは是非その場で体験してみたかったですね。曲と共に万博の様子も映っている映像を紹介します。
4. Iannis Xenakis (1922-2001) «Lichens» (1983)
最後もクセナキス、こちらは後期の作品。編成は打楽器がやや多い他は普通のオーケストラです。
好きになれないと言いつつ、この作品は悪くないと思いました。楽器法は比較的練られている感じがありますし、目立つ音響やリズムがちゃんと構成に活かされているのがいいです。とはいえ、展開はやっぱりダルいなと思うし、「統一感がある」というよりは「一本調子」の印象が強い音響は少し飽きます。
1階席の後方で聴いていたのですが、ここだとオーケストラ全体はよく見えないのでちょっと失敗しましたね。次からオーケストラの場合は2階席にしたほうがいいかなと思いました。
最後の作品の動画も紹介しておきます。