ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー 他 -パリ管弦楽団 6/6@PdP [6.5]

6月6日、フィルハーモニー・ドゥ・パリで行われた、パリ管弦楽団のコンサートに行ってきました。
指揮はトーマス・ヘンゲルブロック、現在のパリ管のアソシエイト・コンダクター(副指揮者)です。

今回のコンサートはタイトルがついていませんが、敢えてつけるなら「Negro-Spirit(黒人文化の魂)」といったところでしょうか。20世紀前半に生まれたジャズ・ブルースやポピュラー音楽の影響を大きく受けた作品群のコンサートです。

 

 

プログラム

 

1. William Levi Dawson (1899-1990) «Negro Folk Symphony» (1934、1952改作)
2. William Grant Still (1895-1978) «Poem for orchestra» (1943)
3. George Gershwin (1898-1937) «Rhapsody in blue» (1924)

 

前半3曲の作曲家は皆世代が同じですね。最初2人は僕はいずれも存じ上げなかったのですが、ドーソンスティルもアフリカ系アメリカ人です。3曲とも作られたのはいわゆる「戦間期」の頃ですが、この時期は戦後を待たずに既にかなり前衛的な作品が作られている一方で、今回の作品群のような一般的に受け入れられやすい、耳馴染みの良い作品も多く作られている、面白い時期なわけです。Wikipediaによるとスティルはヴァレーズに師事したと書かれていますが、まさにそのヴァレーズがこの頃の前衛の最先端の一人でした。

1913年に当時の前衛の最先端ともいえる『春の祭典』を作ったストラヴィンスキーが、1945年にジャズの語法を取り入れた『3楽章の交響曲』を、まさにアメリカで作ったというのがこの時期のクラシック界を象徴的に体現しています。

2曲ともクラシックのオーケストラ技法を上手に駆使しながら、新しい語法を取り入れているとても聴きやすい作品です。今日の(特にオーケストラの)劇版音楽は語法的にはこの時期でほぼ完成されていてそれ以来ほとんど変わっていないので、現在の私たちの感覚からすると映画のサウンドトラックっぽく感じるかもしれません。

 

ドーソンの方の作品の動画を紹介しておきましょう。

 

William Dawson – Negro Folk Symphony (1934)

 

3曲目はお馴染みのガーシュウィン。説明は不要でしょう。

ピアノはStefano Bollani、イタリアのジャズピアニストです。髪を後ろに結んだいかにもそれっぽい雰囲気で見た目はすごく好きなのですが、演奏は少し物足りなかったですね。テンポの崩し方もそんなに面白くなかったですし、全体的にそれほど遊び心が感じられない演奏でした。アンコールでやったジャズナンバーの演奏は面白かっただけに残念です。

 

 

この写真では見づらいかもしれませんが、今回のコンサートはこのように馴染みやすい雰囲気なので、1階席が全部とっぱらわれて、床に座って聴く形式をとってます。あのときの謎の繊維のコンサートと似てますね。

 

4. Bernd Alois Zimmermann (1918-1970) «Nobody knows de trouble I see» (1954)

ツィンマーマンはドイツの作曲家で「ダルムシュタット組」の一人です。難解な作風で知られていますが、今作の「トランペット協奏曲」は比較的聴きやすいかと思われます。もちろん今回のプログラムの中で比べるとダントツで前衛風ではありますが。ソリストは2種類のミュートを使い分けたりしてましたが、それほど目立つわけでもないですし見所もあまりありませんでした。

 

 

5. Jenny Peña Campo Field (1983-) «Suite cubana» (2016)(国内初演)

最後は一気に時代が飛んで、現代の作品です。作曲者はハバナ生まれのヴァイオリニストであり作曲家の女性です。ヴァイオリンの方では既に世界的なコンクールでいくつも入賞しているようです。

さてどんな作風で来るのかと思っていたら、どストレートなマンボで始まって面食らいました。なるほどそう来たか。マンボのテーマを使いながら、しかしハーモニーや楽器法に工夫を凝らしており、また曲調もいろいろと変化させながら飽きさせない作りになっていました。打楽器はコンガマラカスを始めアフリカやメキシコ系のものが多く使われていました。さらにときどきオーケストラ全員で「ハッ! ウッ!」というマンボのあの掛け声がかかるので大変盛り上がっていました。

終楽章で使われていたテーマは、プログラムによるとカーニバルのときの伝統的な歌をモチーフにしているようで、それもマンボと同様、ハーモニーや楽器法で色彩を変化させながら構成に工夫を凝らしていました。良い作品でした。

 

 

演奏は、全体的に楽しげで良かったとも言えるのですが、率直に言えば脇が甘いと言いますか、ノリでごまかさないできちんと仕上げて欲しいところも多くありましたね。とは言えこの日は朝からコンサート直前まで授業で疲れていたので、むしろこういう方向性でありがたかったです。まあ最後がとても盛り上がってたので、終わり良ければすべて良し、かな?