【アクースモニウム】Festival Présences 2020(ベンジャミン祭り)6日目 2/14@ラジオフランス

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パリのラジオフランスで開催中の現代音楽フェスティバル、Festival Présences 2020の第5日目の紹介記事です。今年の特集作曲家、ジョージ・ベンジャミンについては初日の記事をご覧ください。前回はこちら。

Festival Présences 2020(ベンジャミン祭り)5日目 2/13@CdlM
パリのラジオフランスで開催中の現代音楽フェスティバル、Festival Présences 2020の第5日目の紹介記事です。今年の特集作曲家、ジョージ・ベンジャミンについては初日の記事をご覧ください。前回はこちら。 このフェスティバルのコ...

 

この日はなんとフェスティバルのイベントが同じ時間で被っていました。一つはフィルハーモニー・ドゥ・パリでベンジャミンのオペラ、もう一つはラジオフランスでアクースモニウムのコンサート。どちらにするか迷うところですが、まあオペラの方は後でフランスミュージックでも聴けるし、チケット高いしということでアクースモニウムの方へ行ってきました。

おそらく今回のコンサートはフランスミュージックで配信はされないと思います。でも配信するほどのクオリティではなかったのでご安心ください。

一方オペラの方は既に配信されています。Vendredi 14 février 2020 の日付の“Written on skin”というタイトルです。興味のある方は特集ページからどうぞ。

 

2つのコンサートがあったので順に紹介していきます。

 

プログラム

 

実は電車を一本ギリギリで逃してしまい、到着が遅れたので最初のベンジャミンの作品を聴き逃してしまいました。それで本来の予約座席じゃないところへ案内されたんですが、なんとその席の隣にクラスメートのテオがいました。そんな偶然あるかいな。お互い「ええ!?」みたいに顔を見合わせてしまいました。そんな中で2曲目が始まりました。

 

2. Laurence Osborn (1989-): «Absorber» (2019) ※国内初演

この作品だけアクースモニウムではありません。ピアノの上にシンセサイザーを置いて二つを混ぜながら演奏する作品。スタイルとしてはプログレ風というか、シンセの音色も含めて「いつの時代だよ」と言いたくなるような作風でしたね。それ以外は特に語ることもなく。2.0。

 

 

3. Rocio Cano Valino (1991-): «Okno» (2019) ※世界初演

ラジオフランスの委嘱作品。「ガシャコン」みたいなメカニックな複合体を動かすような音と様々なパルス系の素材を主体とする作品。素材自体は面白かったですね。パルス音は動きも出せるし音高のある素材ならハーモニーも作れるので、色々な活用法があります。この作品では時折リズムシークエンスとパルス音を混ぜて、グラデーションにしたりフェイントをかけたりしていたので、この発想自体は良かったと思います。ただ作品全体としてはその素材を構成的に発展させるには至ってなかったので、その点は残念です。4.5。

 

4. Ivo Malec (1925-2019): «Week-end» (1982)

ブーレーズと同い年の電子音楽界の巨匠、イヴォ・マレックの作品。去年の夏に亡くなって、これまでも色々と追悼演奏会が行われました。

 

公式プログラムのインタビュー記事

2部に分かれていて、前半はシンセティックなハーモニードローンの中でアコースティックな素材を織り交ぜるようなシークエンス、後半は弦楽器の低音にエフェクトをかけたような音の上に、倍音っぽい音をいろいろ重ねていくようなシークエンス。素材も音響も構成もどれもさほど目を引くものはなかったですね。2.5。

 

5. Jonathan Harvey (1939-2012): «Mortuos plango, Vivos voco» (1980)

イギリスの作曲家。日本語版Wikipediaに記事もあります。これはIRCAM時代の作品。

複数の鐘の音がガランゴロンと鳴ったあとでその音を逆再生した素材のシークエンスが始まり、少女の歌声が混ざってくる。その後は鐘と歌声の素材だけで、それを色々といじっていく作品。こういうスタイルは和声感が重要ですが、それを練ろうとする意思がなく、その結果音の重ね方が退屈になっていました。素材自体は可能性がありそうだったのでもったいないですね。3.0。

 

終演後にテオと軽く話す。

テオ「やあびっくりしたよ。急に了三が隣に来たから笑っちゃった」
僕『いや本当にね。まさか君がいるとは』
「次のコンサートも聴く?」
『うん』
「そう、俺は帰るよ」
『僕はもう予約してしまったからね。逃げられないのさ』
「はは、そしたらまた学校で。それじゃあね」

ということでテオとお別れ。第2部はいつも通り一人で聴きます。

 

プログラム

 

1. Elsa Biston (1978-): «Il n’y a pas d’autre côté» (2019) ※世界初演

ラジオフランス委嘱作品。アンプノイズのような低音が続く中で鈍い「ガン、ガン」という音が時折出てくるという、まあ小細工は多少あるものの基本的にはそれが延々続くだけ。ナメてんのか。しかも20分以上もあった。これに拍手してた客もトチ狂ってんじゃないかと疑いたくなる。0.0。

 

2. Florent Colautti (1991-): «Mécano» (2019) ※世界初演

ラジオフランス委嘱作品。ディストーションを効かせたシンセ音のリズムシークエンスが続く中で、それを変容させたり音を加えたりする作品。先ほどとの比較だと何でもマシに聴こえてしまいますが、これも別段面白いわけでもなく。2.5。

 

3. Julien Beau (1982-) / Mokuhen (1970-): «Paysage accidenté» (2019) ※世界初演

ラジオフランス委嘱作品。アニメでオバケが出てくるときのようなSEみたいな素材から始まり、やがて音が重なって最終的には重低音の上に水音などの素材を入れ替わり繰り返すシークエンスに至る作品。音響としてはこの回で一番まともでしたが、構成はいまいち。3.0。

 

4. Florentin Ginot (1993-) / Helge Sten (1971-): «Live électronique» (2019)

タイトルの通り、コントラバスを使ったライブエレクトロニクスの作品。3部に分かれていて、最初は駒の近くで持続音をボーンボーンと鳴らして、そこに電子音響が加わる。おそらくマイクで拾った音の特定の周波数帯だけを拾って増幅させる、またはそれに近い仕掛けだと思います。リズム面での仕掛けは一切ないので、ずっと持続音が重なるだけです。じゃあアンビエント的かと言われると、電子音響が歪んでて音質が悪いので、聴いてて心地よいものでもありません。で、2部で今度はピチカートで同じことをやって、3部でまた最初と同じことをやる。もうええっちゅうねん。なんで全く同じ仕掛けのを繰り返す必要があるのか。1.0。

 

 

といった感じで、いつものGRMのがっかりコンサートでした。金返せよ本当。

 

 

で、さらに電車の終電を逃し地下鉄駅まで歩く羽目に。んん? なんか既視感があるなと思ったら1年前の同じフェスでまったく同じことをやっていました。学ばない人間である。そして優等生テオの判断は正しかったなーとここでようやくわかるんです。くそう、くそう。

 

次はこちら。

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