Festival Présences 2020(ベンジャミン祭り)5日目 2/13@CdlM

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パリのラジオフランスで開催中の現代音楽フェスティバル、Festival Présences 2020の第5日目の紹介記事です。今年の特集作曲家、ジョージ・ベンジャミンについては初日の記事をご覧ください。前回はこちら。

Festival Présences 2020(ベンジャミン祭り)4日目 2/12@ラジオフランス
パリのラジオフランスで開催中の現代音楽フェスティバル、Festival Présences 2020の第4日目の紹介記事です。今年の特集作曲家、ジョージ・ベンジャミンについては初日の記事をご覧ください。前回はこちら。 ...

 

このフェスティバルのコンサートは全てフランスミュージックのHPで聴くことができます。フェスティバルの特集ページはこちら(いつまでリンク先が生きてるかは不明)。

今回のコンサートは既に配信されています。Jeudi 13 février 2020 の日付の2時間28分のものです。興味のある方はチェックしてみてください。以下、作品が始まるタイムラインも合わせて記しておきます。

 

プログラム

 

今回はいつものラジオフランスではなくシテ・ドゥ・ラ・ミュージックのホールでのピアノリサイタル。新曲は一つだけでした。

ピアニストはピエール=ローラン・エマール、メシアンの奥さんのイヴォンヌ・ロリオに師事し、わずか19歳でアンテルコンタンポランの創設メンバーとして参加したほどの早熟の天才です。現代音楽を得意としていますが、ベートーヴェンのピアノコンチェルトの全集録音などもしており、幅広いレパートリーをもつピアニストです。日本語版Wikipediaの記事はこちら

どんな演奏をするのか、一つ映像を紹介しておきましょう。2016年のリサイタルで、ベートーヴェンの熱情を弾いています。

 

Beethoven: Klaviersonate f-Moll op. 57 (»Appassionata«) ∙ Pierre-Laurent Aimard

 

こんな感じで、実に表情豊かに弾く人です。今回はさらにグールドよろしく本人の歌声も結構聴こえてきました。録音でも残っているので、なんか声が聞こえるなと思ったらそれは本人のです。

 

1. スウェーリンク: 半音階的ファンタジア
-40mn 15s-

最初はルネサンス末期の作曲家、スウェーリンクの作品。おそらくスウェーリンクの中でもこの作品が一番有名だと思います、というか僕はこれしか知りません。8分近くある大きなフーガとしてはかなりの名曲だと思うので是非聴いてみてください。Youtubeの楽譜付きの映像を紹介しておきます。

 

Jan Pieterszoon Sweelinck – Fantasia Cromatica

 

良い曲でしょう。で、今回はこれをピアノで弾こうということなんですが、ピアノだと音が伸ばせないので、拡大したテーマとかを弾くのが難しいんです。なので普通はこの曲はオルガンでしか演奏されません。今回の演奏はやはり彼らしく独特、というか僕の印象では「作曲家が弾くピアノ」っぽいですね。曲の魅力を伝えるような演奏というよりは、分解・分析するような弾きっぷりでした。

 

2. ベルク: ピアノソナタ op.1
-48mn 40s-

続いて演奏順変わって、ベルクのピアノソナタ。ベルクがシェーンベルクの下で学んでいた時代の作品で、後期ロマン派のハーモニーを駆使しながらソナタ形式というものをどのように指導していたのかが垣間見えます。僕自身大学時代に分析したことがあるので、これを聴くと当時を思い出すくらい記憶に刻まれている曲です。でも生演奏で聴くのはこれが初めてです。日本人はあまり弾く人がいないんですよね、なぜだ。

演奏は良かったですね。絶妙な和声感をちゃんと表現している演奏で、テンポの揺らし方や連符の処理も良かったと思います。さすがここらへんの時代のスペシャリストだなといったところ。

 

先ほど引き合いに出したグールドがこれを弾いてる映像があったので紹介しておきます。バッハで有名なグールドですが、この時代の作品も結構弾いています。シェーンベルクとかヒンデミットとか。

 

Glenn Gould – Berg, Sonata for Piano op. 1 (OFFICIAL)

 

3. George Benjamin: «Shadowlines» (2001)
-59mn 45s-

続いてベンジャミンの作品。副題に「6つのカノン風プレリュード」とついています。

1h 4mn 20s あたりでガサガサッと鳴っています。これは譜めくりの人がめくったのを彼が戻してるときの音で、「お、めくり間違えたかな?」と思ったら直後にまたすぐ本人がめくってました。わずかにタイミングがずれたのか、それとも焦ってめくり間違いと勘違いしたのか、それは謎のままです。まあでもこういうことはよくあるので、コンサートでの譜めくりも楽ではないんです。僕もかつてブーレーズのソナチネの譜めくりを依頼されたことがありますが、本番でミスはなかったもののあれは大変でした。

作品については、ピアニズムとしては悪くないと思いますが、ハーモニーや構成はやはり迷路的で、それほど好きになれるものではなかったですね。「カノン風」というのが理解できればもっと違うのかもしれませんが。3.5。

 

 

4. ベートーヴェン: ピアノソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』
-1h 41mn 45s-

最後はベートーヴェンソナタの中で最も巨大なハンマークラヴィーア。演奏も難しいです。

まさに「熱演」の二文字にふさわしい演奏でしたね。爆発力もあり多彩な表情のテクニックもあって凡庸なピアノではまったくないんですが、さすがに勢い任せの部分も目立つかなというのはあります。肝心な部分のミスタッチも一つや二つではなかったですしね。彼ほどのピアニストでも難しいという証拠なのか、それとも本調子ではなかったのか。先ほどの件で譜めくりの女性との関係性が悪くなってやしないかと心配でしたが、曲が終わった瞬間にまず譜めくりの彼女と握手を交わしていたので、ホッとしました。いや別に僕が安心するようなことでもないんですけどね。

 

 

というわけで、ルネサンスから始まり現代に至るあらゆる時代の作品を網羅したコンサートでした。こういうのを実現できるというだけで相当すごいピアニストであることは間違いありません。個人的には他の現代作品も聴いてみたいですね。リゲティが得意みたいなので、それを是非。

 

次はこちら。

【アクースモニウム】Festival Présences 2020(ベンジャミン祭り)6日目 2/14@ラジオフランス
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