ウェーベルン: パッサカリア 他 -パリ管弦楽団 10/16@PdP [8.0]

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10月16日、フィルハーモニー・ドゥ・パリで行われた、パリ管弦楽団のコンサートに行ってきました。指揮はFrançois-Xavier Roth、現在ロンドンフィルの首席客演指揮者、ケルン市音楽総監督などを務めています。

 

プログラム

 

1. ウェーベルン: パッサカリア op.1
2. リヒャルト・シュトラウス: 『4つの最後の歌』
3. ストラヴィンスキー: ペトルーシュカ (1911年原版)

 

最初に指揮者から挨拶があり、今回のこのコンサートに尽力してくれたある人が9月末に亡くなったらしく、黙祷の時間が設けられました。観客も全員起立して黙祷を捧げました。その後にザーっと観客が着席するやいなや演奏が始まって、こんな始まり方で大丈夫かと思ったのですが、演奏は圧巻でしたね。

ウェーベルンは1883年オーストリア生まれの作曲家。シェーンベルクの弟子の一人で、もう一人の弟子のベルクと共に新ウィーン楽派Second Viennese School)と呼ばれています。音楽史の中で極めて重要な位置付けの3人なので、名前を覚えておくと良いでしょう。

これはウェーベルンがまだシェーンベルクの下で修行していた時代の作品で、この数年後には大きく変化してしまう彼独自のスタイルとは違って、後期ロマン派風の作品です。重要な作品なのでこれまでも映像やCDでは何度も聴いていたのですが、生で聴くのはこれが初めてでした。しかし「こんなに良い曲だったっけな」と思うくらい、素晴らしい演奏でしたね。

指揮は一見落ち着いているのに引き込まれるようなエネルギーを秘めていて、同時に隅々までオーケストラの響きを管理しきっている明晰さもあり、まだ若いながら円熟を感じさせるものでした。迫力が十分にあるのにその迫力に決して飲まれない見事な演奏でした。

 

 

次いでリヒャルト・シュトラウスの『4つの最後の歌』(Wikipedia)。最晩年の作品で、初演も作曲者の死後に行われています。

ソプラノはLise Davidsen、ノルウェー出身のオペラ歌手です。これもまた見事な歌声でした。何が良いかと言うと、彼女の声量はかなり余裕があるんですよね。まったく力まずにホールの一番後ろまで届く声なので、弱く繊細な表情で歌っていてもオーケストラが音量を抑える必要がありません。これは本当にすごいことです。パリでこれまで聴いてきたソプラノでは最も素晴らしいと思います。

今回の曲はその彼女にうってつけで、死にゆく間際の天国的な叙情を儚げに、しかし充実した歌声で聴かせてくれるので、いや本当に感嘆するばかりでした。

 

 

最後はペトルーシュカ。今年の3月に同じくパリ管の演奏を聴きましたね。今回注目すべきはなんと言ってもフルート、もともとソロも多くてフルートが目立つ曲ではあるのですが、どこをとっても素晴らしい演奏でした。他の木管楽器も総じてレベルが高かったです。

ただしアンサンブル全体としては少し乱れ気味というか、あまり正確じゃない箇所や歩調が合わないようなところがありましたね。前半の冴え渡るような演奏とは対照的にそこが残念でした。トランペットなんかも悪くはなかったのですが、もう一歩欲しかったというところ。

 

 

結構規模の大きいプログラムだったので、終わったらもう23時前でした。予想以上に楽しいプログラムでよかったです。特にソプラノの彼女の歌はまたどこかで聴きたいですね。