10月15日、シテ・ドゥ・ラ・ミュージックのアンサンブル・アンテルコンタンポランのコンサートに行ってきました。今回の作品はいずれも電子操作の要素がない、純オーケストラのものです。
1. Mark Andre (1964-) «riss» (2014-17)
パリ出身、高等音楽院卒業後、シュトゥットガルトへ行きラッヘンマンに師事。現在も主にベルリンで活動している作曲家です。
だいたい各20分ずつくらいの三部作(3楽章ではない)の作品なのですが、雰囲気はどれも非常に似通っています。楽器はほぼ全て特殊奏法、特にホワイトノイズ系(呼吸音や打楽器をこするようなシャーとかヒューみたいな音)を多用しています。テンポは全体的にゆっくり、ときどき一拍子一音の打楽器がポン、ポン、ポン、と鳴るような箇所もありました。
とにかく言えることは、これでよく1時間もたせようと思ったなということだけです。展開に欠けるし常に同じような音響が続くので、まあ誰でも飽きてしまうでしょう。しかもアンビエントというわけでもないし。なので途中退場も結構多かったです。2.5。
このあと休憩を挟んだのですが、なんか帰ってくるお客さんが少ないような気がします。いや、最初から少なかったかもしれませんが、あまり覚えていません。とにかくアンテルコンタンポランのコンサートでここまで空席が目立つのは初めて見たと思います。多分充填率50%いってるかどうかぐらいじゃないですかね。
2. Matthias Pintscher (1971-) «mar’eh» (2015)
2013年よりアンテルコンタンポランの常任指揮者を務めているピンチャーの作品。前回聴いたのは半年前ですね。バイオリンソロと室内オーケストラの作品。ソロはメンバーのDiego Tosi、現在のアンテルコンタンポランのバイオリンの中でもかなり信頼の置ける演奏家です。
先ほどのものと比べると特殊奏法の割合はぐっと減って実音多め。しかしとにかくオーケストレーションが洗練されています。細かい音や微妙な表情の音を、他の楽器の音が邪魔しないように立体的に組み上げているのはさすが指揮者もできる作曲家ならでは、ということでしょうか。先ほど同様全体的にゆっくりでそれほど盛り上がる箇所もないのですが、飽きさせないような音響と構成になっています。
バイオリンは超絶技巧はそれほどありませんでしたが、全体的に跳躍が多いので正確に演奏するのは難しいと思います。半年前の作品ではバイオリンが面白くなかったので不安でしたが、この作品は面白かったです。これを最初にやっておけばお客さんも帰らなかったかもしれないのに。5.0。
3. Matthias Pintscher (1971-) «NUR» (2018)
同じくピンチャーの作品。新作ですが初演は今年の1月にベルリンで行われています。ピアノと室内オーケストラの作品。初演のときにソリストを務めたのがあのバレンボイムで、彼のために作られた作品のようです。
こちらは3楽章構成で、最後はテンポ速めのリズミカルな楽章でした。今日初めてですねアップテンポなのは。しかしオーケストレーションは割とオーソドックスというか、打楽器の使い方なんかもどこかで聴いたことあるようなものばかりの印象を受けました。
そしてピアノソロがメンバーのDimitri Vassilakisだったのですが、正直彼のピアノはあまり好きではありません。現代作品ではなおのこと重要なパワーがあるわけでもなく、積極的に自分自身の音を作ろうという意欲も感じられないからです。同じメンバーなら日本人の永野英樹さんにやってもらいたかったですね。彼は今回は1曲目のピアノを務めていたのですが。前回彼の演奏を聴いたのは3月ですね。いやーこうやってすぐ過去の記憶を引っ張りだせるのでやはり誰も見てないコンサート評だろうがやっておくべきですね。4.0。
まあとにかく客が少ないコンサートでしたが、致し方なしの内容だったと言わざるを得ません。この日一番の収穫は、僕がアンテルコンタンポランのメンバーの中で最も素晴らしいと評価しているチェロのÉric-Maria Couturierが長髪になってヒゲ大増量されてるのを見れたことでしょうか。(公式HPのプロフィール紹介)いやーほんとかっこいい。早くまた彼のソロが聴きたいです。