1月9日から第9回カルテットビエンナーレが始まりました。世界中から弦楽四重奏団が集まって1週間コンサートをしまくるというものです。それと同時に、今回のテーマはベートーヴェンということで、ベートーヴェンの全16曲のカルテットを各グループが分担して演奏したりもします。まあ参加グループは19個なので弾かないグループもありますが。
これが全体プログラムです。9日から始まったとは言えコンサートはこの日からなので、実質初日と言えるでしょう。というわけで今日から1週間はひたすらカルテット祭りの記事が続きます。へへ、うちはアニメブログじゃないんですよ。
さてまずはカルテット祭り最初のグループ、ヴァン・キュイック弦楽四重奏団(Quatuor Van Kuijk)です。
2012年にパリで結成、同じフランスのイザイ弦楽四重奏団に師事し、翌年には早くも国際コンクールで優勝しています。名前は1stヴァイオリンのNicolas Van Kuijkからとったもの。
1. Christian Rivet (1964-): Quatuor I «Amahlathi amanzi» (2019)(国内初演)
いきなり新曲から始まりました。作曲家はフランス人で、このカルテットに献呈された作品。昨年10月にアムステルダムのコンセルトヘボウで初演。全7楽章で約20分。
第3楽章以外はほとんど似た調子で、ピチカートやコルレーニョのようなポツポツとした音が主体の、まあミニマリズム的な作品と言っていいでしょう。作品は個人的には全然面白くなかったんですが、演奏はなかなか立派で、グループの現代作品に対する適性を感じましたね。そこまで変わった特殊奏法はなかったんですが、途中でチェロが弓を空中でブンッと一振りして松ヤニがファサッと舞う場面があったのですが、会場から失笑が漏れてました。そんな作品です。
2. Wolfgang Rihm (1952-): «Quartettstudie» (2003-2004)
昨年のリーム祭りで散々取り上げた当ブログではおなじみの作曲家。作品はフェスティバルでは演奏されていないものですね。
この作品は終始和声的で、合間に入る特殊奏法がなければ20世紀前半の作品かとも思うような雰囲気です。しかし音楽的内容はかなり良くて、カルテットというか室内楽らしい立体感も十分です。先ほどとは作品としても作曲家としても格が違うというのが明らかでした。
3. シューマン: 弦楽四重奏曲第3番
僕が室内楽ではトップクラスに好きな作曲家、シューマンの作品。名曲です。彼らの師匠であるイザイ弦楽四重奏団の演奏映像を発見したので、是非聴いてみてください。
現代作品を演奏する団体には、古典もこなせる団体とそうではない団体と、やはり分かれるものですが、彼らは冒頭から前者だろうなと感じていましたが、まさにその通りでしたね。まあ今調べたらモーツァルトのCDも出しているぐらいですから、当然なのでしょうけど。
このカルテットの魅力はやはり全体としてのまとまり、そしてそれを支える内側2人ですね。ダネル弦楽四重奏団のような、明らかにファーストとセカンドで奏者としての格が違うカルテットもありますが、彼らはかなり同格に近い感じでしたね。これは良い悪いではなく、それぞれに魅力があるのがカルテットの不思議なところなのです。そしてヴィオラも良かったですね。常に気を配りながらアンサンブルを調整しているのがよくわかりますし、ヴィオラ単体としての出音も魅力的でした。こういうカルテットは見ていて気持ちが良いですね。
ファーストとチェロも全然悪くはないのですが、欲を言えばファーストらしい輝きがもっと欲しいというのはあります。特に古典をやるならそれが顕著で、「ここは俺の歌を聴けええ!」という場面が結構あるものなんです。そこでバリっとソリストとしての音を決めて欲しかったなというのが正直なところですね。チェロは音感はかなり良いなあと思ったんですが、その瞬間にもっともふさわしい音、というには少し物足りない印象がありました。
カルテット祭りのスタートにふさわしい、素晴らしいグループでした。右から2番目がセカンドのシルヴァンで、彼がアンコール前の挨拶もしていたのですが、とても気のいい兄ちゃんという感じですごく好きですね。フランスのカルテットなので、また聴く機会があると思うので楽しみにしています。
で、この後別会場で次のグループのコンサートがあるんですが、そちらは予約のときに既にチケットが売り切れで諦めたのですが、冒頭のプログラムを見ていると「いやーこれはどうしても聴きたいな」と思って、駄目元で会場へ行ってみたらなんかチケット売ってくれました。ありがてえー、やってみるもんですね。
というわけで次の記事に続きます。