2月8日、シテ・ドゥ・ラ・ミュージックのダネル弦楽四重奏団「5夜連続ヴァインベルク祭り」の最終日コンサートへ行ってきました。
作曲家ヴァインベルクと、演奏するダネル弦楽四重奏団の詳細については2日目の記事をご覧ください。
1. 弦楽四重奏曲第14番 (1978)
2. 弦楽四重奏曲第15番 (1979)
3. 弦楽四重奏曲第16番 (1981)
4. 弦楽四重奏曲第17番 (1986)
第9番の嬰へ短調以降、ヴァインベルクは作品の調性を表記してこなかったのですが、第16、17番では変イ短調、ニ長調と調性表記が復活しました。また13〜15番までは速度表記も四分音符=60のような現代的なメトロノーム表記だったのが、AllegroやLentoのような古典的な表記に戻ってます。なので後半2曲は作曲家自身にとっても、ある境地に至ったという思いがあったのかもしれません。
最後の17番は面白かったというか、興味深かったですね。始まりが愉快な調子で、それまでの作品とはまるで人が変わったかのよう。その後も混沌とは違う、自由な響きや展開を繰り広げて、すっきりしているとはいえやはり若書きの頃とは全然違っています。全部で16分ほどで短くまとめてるのもいいですね。好感が持てる作品でした。
4日間聴いた中で気に入ったのは5、6、17の3作品でしょうかね。もちろん演奏の印象もあるので、改めて聴いたらまた変わる可能性はありますが。
演奏は素晴らしかったです。最終日なのでこれまでの疲労の蓄積が心配されるところでしたが、まったくそんなのを感じさせない全力投球の演奏を聴かせてくれました。1stヴァイオリンがすごいのは言うまでもないのですが、影のMVPはチェロでしょう。昔チェロは別の人だったのですが(多分マルク氏の息子)、いつの頃からかメンバーが変わって彼になっていました。僕としては今のチェロの方が好きですね。全体を支える弾き方だけじゃなく、ソロをやらせても表情が多彩で、技術力にも余裕があって見ていてとても安心できます。
アンコールには2日目にもやった「即興とロマンス」でしたが、それでも拍手が鳴り止まずにもう1曲。やっぱり最後も例のスケルツォ。これで3回目じゃねーか。おそらくマルク氏のサービス精神の現れなのでしょう、これまで以上の最高速度で弾き始めたのですが、いくらなんでも速すぎたのか途中で指が回らなくなってきたので他のメンバーが少しずつ速度を緩めていくのがお茶目で面白かったです。終わったら全員総立ちのスタンディングオベーションでした。僕も叫びましたよブラボー。
終わってみれば非常に満足の4日間でした。日本だったら絶対に実現しないプログラムなので、これだけでもパリに来れて良かったと思えます。こんなレベルのカルテットはしばらく聴けないと思うと寂しいですね。
前にも言いましたが彼らは多分また来日してくれると思うので、特に一度も聴いたことない人は是非ともコンサートへ行ってみてください。質の高さもそうですが、他のどんなカルテットにも真似できない音楽をやってくれるというのは本当に貴重です。
ありがとうダネルカルテット。ああ本当に寂しいなあ。