【オペラ】ドヴォルザーク: ルサルカ -パリ国立歌劇場管弦楽団 2/4@オペラ・バスティーユ

2月4日、オペラ・バスティーユのドヴォルザーク『ルサルカ』公演に行ってきました。今回は初のオペラ記事なので、簡単な解説をします。

 

パリにはオペラ用の大劇場が2つあって、一つはいわゆる「オペラ座」と呼ばれるガルニエ宮、もう一つがこのオペラ・バスティーユです。

二つの違いは何か。ガルニエ宮は100年以上も昔に作られた伝統的なオペラ劇場で、演目がない昼間でも内部の見学ツアーが組まれるような壮麗な建物です。ガルニエ宮では基本的に伝統的な舞台演出や衣装で、豪華絢爛なオペラを志向しています。つまり「オペラ鑑賞という特別なひと時を味わいたい」という人にうってつけなのです。

一方でバスティーユ劇場は建てられたのが30年ほど前なので、見た目も現代建築ですし、舞台装置もコンピューター制御が整っています。新しい分自由度が高く、ガルニエ宮では不可能な舞台演出や照明・音響を実現できます。それをふんだんに利用して、抽象度が高く、斬新で前衛的なオペラ演出を志向することが多いです。つまり「オペラは見慣れているから何か新しいものが見たい」という玄人向けです。

 

それが一体どれほどの違いなのかを見てもらうのに、今回の『ルサルカ』はちょうどいい演目です。作品概要は例によってWikipediaに解説があるので、興味があればご覧ください。

映像資料があるのでそれを紹介しましょう。1999年のチェコ公演と、2002年のオペラ・バスティーユ公演の比較です。第2幕の舞踏会のシーンを見比べてみましょう。

まずはチェコの方、1:13:20から始まります。

 

Rusalka – Antonín Dvořák

 

多分皆さん「あーオペラってこんな感じだよね」と思うのではないでしょうか。では全く同じ場面をオペラ・バスティーユではどうやっているのか。こちらも1:13:20から始まります。

 

Dvořák Rusalka Fleming, Larin, Hawlata, Diadkova, Urbano

 

「は!?」ってなりますよね。「全然別物やんけ!」そうなんです。オペラの演出というのはこれほどの幅があるものなのです。いやほんと映像があって助かりました。こんなの言葉でいくら説明しても理解してもらえるものじゃないですからね。

普通は前者の方を好むでしょう。しかし後者は決して低予算の手抜きというわけではありません。作品の内容をよく理解し、舞台全体の演出方針の中で考えると「これはこれで面白いな」と味わえるようにもなってくるのです。あらゆる古典芸術と現代芸術の違いってこんな具合ですよね。

 

さて本題は今日のオペラはどうだったのかという話なんですが、上に挙げたバスティーユの映像が今回のとほぼ完璧に同じ演出です。なのでそれを通して見て頂ければ僕と同じ気分が味わえます。(半分冗談ですが半分本当)

 

 

天井にくっついてるのが字幕モニターです。だいたいどこに座っても字幕が見えやすいようにこういった工夫がなされてます。これもバスティーユならではですね。ご覧の通りびっちり満席です。

 

一応見どころを紹介しておきましょうか。
28:20。ルサルカの有名なアリア「月に寄せる歌」が終わったあとで魔女が登場するときに火が上がります。これはガルニエ宮では絶対にできませんね。

57:10。森番と調理人の噂話のシーンですが、これ何やってるかわかりますか。舞台の中心を線対称にして装置が並べられて人も動いている。つまり鏡を模しているんですね。これだけでも面白いですが、やがて1:07:00で王女が王子を誘惑するときにルサルカと入れ替わる演出に繋がっていくのです。面白いでしょう? 抽象的な演出でしか表現できない領域もあるのです。

1:40:00。第3幕は最前面に後ろが透けて見えるほどの薄いスクリーンを張って、そこに水の映像を投影してます。このスクリーン自体は最後まで残っていて、最後の二人の場面なんかもこのスクリーンのおかげで靄がかって見えて、夢か現かわからないような演出にもなっていて見事でした。

1:48:35。例の魔女が登場しますが、ベッドに寝ているのを上から見下ろした視点で見せてます。これも面白い。

 

今回の公演ではこの魔女役が実に良かったですね。歌唱力が素晴らしいだけじゃなくキャラクターの作り込みがよく練られていて、見ててとても楽しかったです。ルサルカももちろん良かった。王子は非常に若々しいフレッシュな感じで、若干の技量不足もありましたが愛嬌と言えないこともない、かな。

 

 

そんな感じの、オペラ紹介でした。まあ基本的にオペラのチケットはバカみたいに高いのでそうそう何度も行けるものではないのですが、今回は「40歳以下40%オフ」キャンペーンという素晴らしい企画をやっていて、それで割と安くなってたので行ったんですよね。今後もこういうのがあるなら行けるんですけどね。

 

 

オペラはパンフレットも大事な売り物なので、配られるプログラムはこんなペラい紙1枚だけです。雑ゥ!