4日目(9月10日 火曜日)
08:00
起床。この日の朝がこれまでで一番眠かったです。前日はブログの更新で結構遅くまでかかってしまったので寝るのが遅かったですし、今日起きるのくらいはゆっくりでいいだろうと構えていたら何故か母が絵画館に行くのを急かすので、二度寝することも出来ずしぶしぶ起きました。絵画館なんて別にたいした人気でもないだろうから急ぐ必要なんて全然ないと思うんですけどね……
09:00
シャワーを浴びて宿を出発。基本的にいつもシャワーを浴びるのは当日の朝で、初日だけは塔に登って汗だくだったので夜に浴びました。もうあんな汗まみれになる日はさすがにないでしょうから、今後も同じだと思います。
これがミラノの民泊です。この右手にダブルベッドとバスルームがあります。立地はとても良いですし小綺麗な部屋だったのですが、風呂の排水が悪いのは残念でした。僕はどうせボウズなので全然問題ないのですが、女性にとっては厳しいかもしれません。
面白かったのは、初日にこのアパートの玄関に着いたらこの番号に電話してくれとメールで指示があったのですが、そこに電話すると自動的に玄関のロックが解除されるんです。一体どういう仕組みなんでしょうね。こういう芸当ができるなら確かに民泊に便利ですわ。
10:00
まずはフィレンツェのときと同様、電車の中央駅にメトロで行ってスーツケースを預けます。フィレンツェとまったく同じ会社の同じシステムでした。その後再びメトロで絵画館の最寄りの駅に到着。ここは駅の目の前のピッコロ座(小劇場)です。
このエリアもトラムの線路が多いですね。
左の建物がブレラ絵画館です。15~18世紀のヴェネツィア派の宗教画が多く展示されています。この通り沿いは露店が並んでいました。
入口はこんな感じ。
荷物をコインロッカーに預けて早速中を見て回ります。案の定人は多くないので予約なしで余裕で入れます。
この美術館の展示作品で最も有名な作品がいきなり登場しました。アンドレア・マンテーニャ《死せるキリスト》です。斬新な構図の短縮法で描かれた、美術史上においても重要な傑作というのが教科書通りの定説。通常この目線で人体を見るときよりも顔が大きく描かれてるわけですね。実は僕はこの作品がブレラ美術館に収蔵されてることを全く知らずに来たもんですから、最初目にしたときに普通に「うお!」と驚いてしまいました。
ジェンティーレ・ベリーニ《アレクサンドリアでの聖マルコの説教》
中央の赤い子供の持っている楽器が面白くて撮りました。バイオリンの4本弦の他に低弦が2本追加で張ってあります。弾き方も本当にこうやって顔の横にくっつけながら弾いてたんでしょうかね。
アントニオ・カノーヴァ《ナポレオン》
ちなみに入口の写真の彫刻作品も同じ作者のナポレオン像です。絵画の方はジェローラモ・サルヴァード《栄光の聖母子と四聖人》
ヴィンチェンツォ・カンピ《家禽売り》
この豊かな表情がクセになってしまいます。
模写に挑む少年。結構大変な題材を選んだな。
ブレラ美術館最大の目玉である、ラファエロ《聖母の結婚》
Wikipedia英語版に詳細な記事があります。
ジュゼッペ・モルテーニ《子を喪った母の悲嘆》
1845年の作品。やはりこういう表情を描くにはこれだけ時代を経ないといけないわけですね。
フランチェスコ・アイエツ《接吻》
男の服装と階段に足を掛けるポーズが見事に決まってますね。女のスカートの光沢や恍惚とした表情もまた素晴らしい。
ジェローラモ・インドゥーノ《悲しい予感》
この写真ではちょっと見えづらいですかね。懐中時計を手に誰かの帰りを待っているかのような表情の女の部屋には、さきほどのアイエツの《接吻》が飾ってあるんです。これこそ美術における本歌取りですね。これで待つ相手がフィアンセであること、そしてその彼は戦死したため帰ってくることはないことがタイトルでわかります。面白い作品ですね。
現代作品もいくつかありました。
出口にあったカフェスペースです。冒頭に書いた通りこの日はめちゃくちゃ眠かったので、1時間くらい絵を見てたらもう完全に電池切れになりました。途中僕だけは10分くらい椅子に座って寝てました。この美術館は椅子が大量に設置されてるのが嬉しいです。
2階から見た中庭。さて近くにあるお城の見物に行きましょう。
今回降りたメトロの駅から徒歩1分のところにスフォルツェスコ城があります。門をくぐって敷地内に入るだけなら無料です。
天気は少し怪しい感じでしたが雨は降りませんでした。敷地はとても広いです。
門のところでいかにも観光客を狙ってそうな黒人がミサンガを手に「プレゼント」と言ってきました。「要らねーよ」と言ったら「いやいやプレゼントだから」と言うので、「ああそう、じゃあ頂戴」と言ってミサンガを巻いてもらいました。その後会話して握手までした後で向こうが「マニ、マニ」と言い出したのでお互いの表情が一変。「は? プレゼントって言ったろ」「マニ、マニ」「じゃあ外せやコラ。今すぐ外せ」というと舌打ちして他のところへ行きました。こういう手合いには気を付けましょうね。つけてると痒くなってきたのですぐ捨てました。
建物内はいろんな種類の博物館がたくさんあって、いずれも10ユーロの共通券で入ることができます。せっかくなので色々見てみましょう。
楽器博物館。19世紀初頭の垂直アップライトピアノ。
連弾(と呼んでいいのか?)専用のピアノ。
最初期のコーラングレとクラリネット、ファゴット。
この蛇のような楽器はズバリの名前でセルパン、英語のサーペントです。19世紀に発明された金管楽器はこのように現在ではまったく使われなくなったものが沢山あります。楽器って本来そういうもののはずなんですけどね。今オーケストラで使われてる楽器が未来永劫残り続けると信じて疑っていない現在の音楽界の方が歴史上では異常なのです。
右はアマティの直弟子、アンドレーア・グァルネリのヴァイオリン(おそらく数億円)。左は同時代のちょっと変わったヴィオラ。イタリアはヴァイオリンの国ですからね。時間があるならヴァイオリンの聖地、クレモナに行ってみたかったです。
ギターにハープがくっついてるような楽器。ギタープ?
現代音楽のコーナー。イタリアもフランス、ドイツと並んで電子音楽の黎明期を作り上げた国です。ルッソロがその代表で、彼自身は電子作品を残してはいないものの、その先駆けとなる理論を生み出した人物として近現代音楽史で必ず登場する名前です。
演奏会用のホールもあります。
これは装飾美術館でひときわ目を引くメンガローニのカニ。1925年のミラノビエンナーレ(国際装飾芸術博覧会とも呼ばれた)で作られた作品だそうで。
これがスフォルツェスコ城博物館の最大の目玉、ロンダニーニのピエタです。ミケランジェロが作った3つのピエタのうち最も有名なものが23歳のときに作ったヴァチカンにあるピエタですが、これは最晩年、88歳のミケランジェロが死の際まで彫ってついに未完成となったものです。
誰ともつかない、なんとも言えない雰囲気が漂っています。派手な作品ではないので、これを見に来る人はそれほど多くはありませんでした。
12:45
お城を出て昼ご飯を食べに行きます。せっかくだからミラノリゾットを食べたいですねえ。