2週間の帰省もあっという間に最後の夜になってしまいました。連日誰かと会ったり用事があったりと全然休まる時間がありませんでしたね……まあそれはおいおい。
実家の僕の部屋は、一人暮らし時代の引っ越し段ボールがそのまま積まれている物置部屋になっているんですが、なんとなく漁っていたら懐かしいマンガが出てきたりしたので、今のうちに少し紹介しておきましょう。もうこんな機会はないかもしれませんからね。誰もが読んでるメジャー作品ももちろんあるのですが、なるべくマニアックなものを取り上げます。
ふなつ一輝の『華麗なる食卓』。連載開始が2001年、この頃から僕はヤンジャンを読み始めたので、それで知りました。当時からすでにインドカレーにどっぷりハマっていたので好きになってしまうのは当然です。右端にあるレシピ集まで買ってしまいました。
この作品、連載当初から画力が高いなーと思って気に入っていたのですが、連載が進むにつれて更にどんどん上手くなっていくので、すごいなと思っていました。「グルメ×美少女ちょいエロ」という企画といい、女の子のキャラクターデザインといい、かなり先見性のある作品だったと今でも思います。特に成年コミック(エロマンガ)やそれに近いジャンルのマンガに対しては一定の影響があったのではないでしょうかね。まあ実際彼のアシスタントだった人が成コミ作家でデビューしたりしていますから。
まあしかしカレーネタ一本で描き続けるのはやはり大変で、料理マンガの常である「大会編になってダレる」の法則からは逃れることが出来ませんでしたね。コミックは24巻ぐらいまでで集めるのをやめてしまいました。多くのファンと同様、『鉄鍋のジャン』を超える料理バトルマンガは存在しないと僕も思っています。
それでも先述した通り、画力が高くて女の子はとても可愛いですし、序盤のエピソードは引き込まれるところも多いです。今でも好きな作品ですね。
同じくヤンジャンから、佐々木拓丸の『極道つぶし』と『SINfinity』。『極道』は2004年連載開始、やはりこれも本誌を読んで知りました。Wikipediaを見てみるとこれが初の連載作品だったようですね。連載デビュー作とは思えないくらいの画力で、これも絵が気に入って買っていましたね。
ヤクザに母を殺された少女の復讐譚で、ガンアクションしつつも終始重いストーリーなのですが、表紙の主人公マブシは可愛らしいですし相方のユサの天然バカ描写もあって、そういうバランスの良さが好きですね。しかしこれ作品単独のWikipedia記事もあるのですが完全にネタバレしているので興味ある方は読まない方がいいでしょう。いいのかこれ……
作者の佐々木拓丸はこの2作のあと『Eから弾きな。』があって、その後『Re:ロード』を現在連載中です。『Eから』は結構評判が良いみたいなので機会があれば読んでみたいですね。いやーめぐり合わせが良ければ大ヒットを飛ばせそうな作者さんだと思うんですけどね。
きづきあきら+サトウナンキコンビの代表作『うそつきパラドクス』。連載開始は2009年。この作品第3巻までは本当に面白くて気に入っていたのですが、その後の展開はいまいちで僕はここまでしか買っていません。
表紙の栖佑さんのキャラクター造形は、男にとっての夢にあふれているようで、しかしどことなくリアリティーも感じさせる絶妙なバランスで、とても好きです。
今調べてみたら続編を新しく連載しているようですね。これも先ほど挙げた『ジャン』同様、過去のヒット作にすがって続編を出す風潮に乗っかったということでしょうけど、そういうので過去のものを超えることができた例って一つでもあるんでしょうかね。まあ超える自信があって描くわけじゃないんでしょうけどね。
紺野キタの『つづきはまた明日』。連載開始は2008年なのですが、僕は単に評判が良かったので完結してしばらく経ってから買いました。多分2015年頃でしょうかね。
幼い頃に母を亡くした兄妹とそのお父さん一家のお話。いわゆる「日常ドラマ」ものと言いますか、特に大きな事件が起こるような話ではないのですが、妹さやの年相応なしぐさやセリフの描写が良いですし、子供たちへの愛情あふれるお父さんの姿も胸打たれますし、なにより日常ものでありながら突然ファンタジーな描写が紛れ込むのがすごく好きですね。絵柄も優しくて、誰にでも薦めやすい作品です。
これはお隣に引っ越してきた佐保という女の子で、僕はこういう二つ結びの髪型がどうしようもなく好きです。なんだその告白は。なので『天気の子』の陽菜のキャラクターデザインはすごく好きですね。
吉田秋生の『海街diary』。連載開始は2006年ですが不定期掲載で、昨年ようやく完結しました。この最終巻を読むのも今回の帰国目的の一つでした。
僕の一家は父親以外皆マンガ好きで、小さい頃から兄貴たちの買ったマンガを読んで育ったのですが、高校生になった頃くらいから少女漫画にも手を出すようになり、母の集めていた萩尾望都や山岸涼子、佐々木倫子、二ノ宮知子、そして吉田秋生などの作品を読み漁るようになりました。
なので『海街』は第1巻からリアルタイムで追っていたのですが、冒頭から本当に面白くて緻密で、吉田秋生の集大成という予感をこのときから感じていましたね。3、4巻の段階でこの前結婚式に行ったタクミに薦めたら見事にハマって、彼はその後お母さんにも薦めたらしく、僕の布教活動が順調に実を結んでいます。いや本当に、年代問わず読んでもらいたい作品です。
この作品での作劇法というのは(少なくとも僕にとっては)ちょっと独特で、4姉妹それぞれ個別の縦糸のエピソードを、共通の・相似の舞台や視点やセリフ回しの横糸で紡いでいく手法が見事だなと思います。この作品アニメ化に結構向いていると僕は思うのですが、まあターゲットを考えると企画として却下されてしまうんでしょうね。なので是枝裕和による実写映画化となったわけでもちろん観に行きましたが、僕はそれほど好きではありませんでした。
井上雄彦の『バガボンド』。下にあるやつは2006年に発売された画集と、2冊同時購入特典で応募したらもらえる特製収納ボックスです。(自慢)
『バガボンド』の魅力は語りつくせないほどですが、洟垂れ小僧だった頃に読んでも、今改めて読んでも、とんでもなく面白いというのはすごいことです。特に最初期から20巻前後までは、後々の晦渋な表現はまだ鳴りを潜めていて、マンガらしい軽さと彼にしか出来ない画力による筆致が見事に合わさって、すさまじい完成度です。
井上雄彦はスラムダンクの頃から、この単行本のエピソード間に描かれる小ネタが本当に面白いですよね。こういうのを英語・仏語でdistractionと呼ぶのだと思うのですが、これは単なるおまけに留まるものではなく、作品にとってとても重要なことだと思っています。
巻末の袖に書かれている筆者の言葉はどれも好きですが、特にこの17巻のは初めて読んだときからなんだか強烈に印象に残っていて、丸ごと暗記していろんな人に言い聞かせてましたね。まあ当時は「年とともに好みは変わる」という実感なんてわかるような年頃ではなかったのですが、それでもこの文章の表現の仕方が妙に胸を打つというか、なんて面白い・鋭い着眼点と言葉の選択なんだろうかと、いたく感動しました。ほんと、こういう表現が出来るような境地に至ってみたいものですね。
さて以下はマンガとは関係ない、オチ担当の発見物です。
これは『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』の2006年PCパッケージ版です。だいたいこの前後3、4年が僕にとってのエロゲー最盛期なので、当時話題になっていたこの作品も買いました(これは全年齢向け作品ですが)。主役キャストのすずきけいこは本当に素晴らしくて、ゆめみというキャラクターを最高の形でふくらませていましたね。
2016年にアニメ化(Prime Video)もされ、素晴らしい出来でした。その後の劇場版『星の人』をまだ見ていないので、近いうちに見ようと思います。
伝説のアニラジ『Solty Reidio』のラジオCDです。パーソナリティは斎藤桃子と浅野真澄。もともと浅野真澄は声優として単純に好きだったのですが、当時は彼女の素を知らなかったので、大変衝撃を受けた記憶があります。最近は全然アニラジを聞かなくなってしまったのでわかりませんが、こういう方向のふざけたラジオ番組はもう難しい時代なんじゃないですかね。
ほぼ同時期にやっていたアニラジ、『Simoun〜電波 DE リ・マージョン〜』のラジオCD。パーソナリティは高橋理恵子と高橋美佳子。これは別にふざけた番組ではないのですが、この二人のチョイスというのは実に絶妙で、ときどき無性に聞きたくなるような中毒性があります。全体的にゆるい調子でやってる最中に高橋理恵子がときどきホームラン級の笑いを生むのが良いです。この時期にあの『うたわれるものらじお』も始まって、なかなかアニラジが面白い時期だったと思います。
すっかり忘れていましたが、一番紹介したいマンガ『夏子の酒』が見当たらないんです。文庫版の全6巻を持っているのですが、よく人に貸したりしているのでひょっとしたら家にないのかもしれません。
僕にとって一番人に薦めたいマンガと言ってもいいくらい好きな作品で、いつか単独記事を書きたいくらい思い入れがあります。これを読むだけで日本酒に相当詳しくなれるのも確かに素晴らしいことですが、それ以上になによりマンガとしても人間ドラマとしても作品の完成度が高くスケールがとても大きいのが本当にすごい所です。これまで4回ぐらい通しで読んでいますが、そのたびに発見があり、その名作性を再確認させられます。「ナポリを見て死ね」じゃないですが、「夏子を読んで死ね」と言いたいくらい、オススメのマンガです。夏子を読んで死ね。いや生きて布教しろ。